こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『絶対猫から動かない』新井素子

2020-04-03 20:03:43 | 読書感想
 
ある日、地下鉄で乗り合わせた女性が昏睡状態に陥った時から、夢を必ず覚えているという大原夢路を中心に、同じ夢を見続けるようになってしまった。

調べていくと、原因が「三春ちゃん」という人の生気を餌とする妖怪にある事が分かる。
どうやら、地下鉄に同乗していた中学生のうちの一人が餌となり、亡くなってしまったようだ。
他の夢を見ようにも結界が張られている上に、昏睡した人は無意識に結界を張るらしく、結界が二重になり、三春ちゃんにも解けなくなってしまったという。

三春ちゃんと目を合わせた人は、自動的に目を離せなくなり生気を吸われてしまうのだが、なぜか平気な夢路を中心として、結界から逃れる術を考えてみる。

昔の作品『いつか猫になる日まで』の50歳代版だそうです。
なるほど、20歳代の頃よりも守るものが増えますし、身軽な行動はしにくくなりますよね?
一方、色々な経験を積み重ねた事で、若い頃には分かりにくい心の機微も分かるようになってきますし。
逆に、若いからこそできる「ぺち」もあります。
あのシーンは、微笑ましくて好きです。

他には、市川さんの啖呵とか、村雨さんの洞察力と空気の読めなさとか。
何と申しますか、素子さんが登場人物みんなを愛しているのが、ひしひしと伝わってきました。

初めにページをめくった時、素子さんには珍しい二段組に驚きましたが、休日の日中を使えば読了できました。
皆さんも、二段組を敬遠しないで読んでみて下さい。
文体は読みやすいですし、少しずつ読んでいっても何とかなります。
646ページなので、持ち歩きに向かないのが残念です。
コメント
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