今、ピアニストのユジャ・ワンに注目している。
中国出身、27歳の女性ピアニストである。
とにかく上手い。
難しいパッセージを軽々と弾きこなすかと思えば、ゆったりしたフレーズも最上の間合いで美音を奏でる。
上のCDは、ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」と、同じくラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」のカップリング。
「パガニーニの主題による狂詩曲」は、ご存知の方も多いと思うが、この中の第18変奏がとくに有名だ。
昔、NHKラジオの音楽番組「立体音楽堂」でも、この部分が番組テーマ曲として使われていたのを、今でも記憶している。
ピアノとオーケストラで表現されるこの美しい旋律は、この曲を知らない人でもどこかで聞いたことがあるにちがいない。
オーケストラを指揮しているのは現代最高の指揮者の一人、クラウディオ・アバド。オーケストラはマーラー・チェンバー・オーケストラ。
アバドはユジャ・ワンのピアノ演奏にていねいに寄り添いながら、曲全体をきっちりとまとめ上げている。
カップリングの「ピアノ協奏曲第2番」も熱のこもった名演だ。このCDは、ベテランと新鋭の幸福な出会いがもたらした貴重な一枚といっていいであろう。
ところで、このクラウデディオ・アバド、今年の1月に、世界の音楽ファンに惜しまれつつこの世を去った。享年80。
現代のクラシック音楽界を代表するマエストロの逝去に、わたしもこの機会に遅ればせながら、心より哀悼の意を表する次第である。