興趣つきぬ日々

僅椒亭余白 (きんしょうてい よはく) の美酒・美味探訪 & 世相観察

凛とした指揮姿

2015-04-06 | 時には芸術気分

昨日はサントリーホールに、オーケストラを聴きに行ってきました。

日本フィルハーモニー交響楽団です。

指揮は西本智実さん、ピアノは若林顕(あきら)さん。曲目は、

・チャイコフスキー:オペラ《エフゲニー・オネーギン》より「ポロネーズ」
・ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲(ピアノ・若林顕)
・チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調

のロシアン・プログラムでした。

幸いにも今回はS席・前から7列目のよい席で、楽団員の表情から指揮者の動きまで間近に見てとることができ、とても興味深かったです。(演奏も大変よかった)

まず、指揮者の西本智実さん。 美人である上に表情も凛としていて、体型もスマートな方ですが、それは少し置いといて、ともかく指揮姿がとても‘決まって’いました。

動きが多彩で大きく、体全体で指揮をしています。テンポ、強弱だけでなく、オーケストラ各パートへの細かい指示もあるのでしょう。
強奏時には腕を大きく振るため足を踏ん張る、その踏み出しのドスッという指揮台での音まで聞こえてきました。

ともあれ、その指揮の流れのどの一コマをとっても、きっと絵になるだろうなと思わせてくれる指揮ぶりでした。時折顔にたれる髪をかき上げる、その所作までサマになっています。

西本さんはおそらく、指揮そのものとともに、指揮する姿が観客からどう見えるかにも周到な配慮を払っているにちがいありません。

 

 

 

この方が西本智実さん。

写真もプロに撮らせ、吟味して出しているのでしょうね。(事務所の意向かもしれませんが)


コンサートマスターは、若いきれいな女性でした。千葉清加(さやか)さん。肩書は「日本フィル・アシスタント・コンサートマスター」。

コンサートマスターは、一曲めの演奏の開始時、楽団員全員が舞台に揃ってから、ヴァイオリンを手に、おもむろに登場します。
会場から初めて拍手がわきおこります。

千葉さんは第一ヴァイオリンの一番前(指揮台の脇)の自分の席まで来ると、そこで立ち止まり、笑みを浮かべながら会場に一礼しました。

なんてチャーミングな人でしょう。きれいというより、かわいい感じの人でした。会場からはまた大きな拍手。

ついでながら、コンサートマスターのすわるイスは別格なのですね。
ほかの楽団員たちは普通のパイプイスなのですが、コンサートマスターのイスは、脚と背もたれが黒塗りで、すわるところが濃い赤(小豆色)の革張り(たぶん)です。

サラリーマンが出世すると肘付きイスが与えられ、さらに出世すると背もたれが高くなる、あれに似ていなくもありません。
コンサートマスターになるのは大きな出世なのでしょうか、それともまた違う意味があるのでしょうか。

それはともかく、千葉さんはこのあと、立ったままコンサートマスターとしてオーケストラ全体のチューニングをリードし、それが終わるとその特別なイスに腰を下ろしました。

そして、ここでいよいよ指揮者の登場ということになるわけです。


しばらくぶりで聴いたオーケストラの生の音、とても迫力がありました。

「チャイ五」(チャイコフスキーの交響曲第5番)の最終楽章の盛り上がりに思わず引き込まれてしまいました。
もちろん、西本さんの指揮がよかったからです。

「パガニーニ・・・」を弾いたピアノの若林顕さんもいい演奏でした。打鍵が強靱で歯切れがよく、オーケストラの強奏にも負けない音を出していました。

ただ、わたしの好みから言えば、有名な第18変奏のピアノのソロパーツでは、もう少し弱音を効かせ、より繊細な味を出してほしかった。これはあくまでもわたしの感覚です。

最後の曲、チャイ五が盛り上がって終わり、観客の鳴りやまぬ拍手に応えて演奏したアンコール曲は、チャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレ。

オーケストラの弦楽器群だけで演奏されたこの曲の、その美しさに、わたしは思いがけず、目頭が熱くなってくるのを覚えました。

アッという間の二時間。十分に楽しむことのできた演奏会でした。