ちょっと宣伝から想像していたような身障者の社会復帰譚とはかなり違うハードな感触。
二人が初めて会って車に同乗しているところで、むき出しになった太腿が目に入ってしまうのがもちろんエロチックであるとともに後でこの脚がなくなることがわかっているので、また別の緊張感がある。
脚がない姿で泳ぐ姿や腿だけの脚に合わせたストッキングを脱ぐカットなど、あまりにリアルでそのまま撮っているように錯覚してしまう。
男がやっているのはバーリ・トゥードをもっと野蛮にしたようなストリート・ファイトの賭け試合で、歯が折れ骨身が軋むような痛みがふたりを結び付けているようでもある。
肉体による「合意」がデッサンできているのに作者の人間の見方の深度を感じる。
氷を素手で割るシーンで氷水の中で漂っている息子を捉えたカットが、シャチのショーの事故で大ケガしてプールで漂っているヒロインの姿と自然にだぶる。
シャチが水槽の向こうに現れるカットなど水や肉体の質量感が、ことばにしずらい何物かを語っている。
スーパーの監視カメラというのは万引き客を見張るためであるより店員が金をくすねるのを見張るためだ、と聞くが、それに対する店員側の反発と抗議は日本では今のところ考えにくいレベル。監視を店側が直接やらないで外部の人間にやらせて自分はいざとなったら逃げられる態勢にしておくのも、それだけ軋轢が激しいためだろう。
(☆☆☆★★★)
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