ただ、ここでちょっと異色なのは他の人間が見て同じ人間だと思わず別人として扱うというところだろう。
もともとオレオレ詐欺を思わず手を染めてしまうあたりで、あまりにやり方がずさんなのでこれでバレないわけがないと思ったら相手の方から間違えてくれる、というのを通り越して相手が見たいように見たとおりの人間として扱われて、主人公が唯一無二の存在ではないという位置づけにエスカレートするのがおもしろいし、寓意を感じさせるところ。
ただそれが他の人間まで主人公と同じ顔に変貌するとなると亀梨和也がメイクでさまざまな顔を作って演じわけているのが裏目に出て、誰が誰だかわからなくなる、というより「他者がいない」状態を表現していること自体が腑に落ちるまで時間がかかって、消化不良感とがちょっと残った。
エンドタイトルで亀梨和也のすべての役名がずらりと並ぶのが笑わせる。もちろんれっきとした有名人であるのにも関わらずどこにでもいるアノニマス(無名者)になりきっている。役をつかむのに「千と千尋」のカオナシを参考にしたという発言がおもしろい。
(☆☆☆★)
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