演出 鵜山仁
出演 加藤健一/加納幸和/一柳みる/西山水木/石橋徹郎/金子之男/岡﨑加奈
前に加藤健一は三國連太郎が座長を演じていた同じ「ドレッサー」のタイトルロールのノーマンをやっていたのを、今回は座長役。ドレッサーは花組芝居の加納幸和。
余談だけれどこの三國座長版公演、プログラムを見ると槍持って立っているだけの役の一人が豊川悦司だったりするのにびっくりする。当時在籍していた劇団三○○(さんじゅうまる)主催だった渡辺えり(当時えり子)が客演していたので、その関係だろう。
こういう具合に同じドラマで昔若い方の役をやっていた役者が年かさの役に移って再演する例というのはいくつかある。
映画版の「奇跡の人」でヘレン・ケラーをやっていたパティ・デュークが再映画化でサリバン先生役をやったり、「探偵スルース」で若い美容師役だったマイケル・ケインが再映画化では老推理作家をやったり、など。
いかにも優れた作品が受け継がれていく感じがする。
三國連太郎の座長はイメージとして傍若無人でわがままで手に負えない感じが強く、意外にも舞台初主演(というか、舞台他にやっているのだろうか、Wikipediaには出ていない)だったのである種の異人というか舞台からはみ出ていたが、今回の座長は何しろ加藤健一自身が座長なのだか脱線しながら全体の軸になっている。
身体の大きさもいかにもデカい三國の座長に加藤のドレッサーがまめまめしくくっついていた感じなのが、今回はドレッサーの加納の方が背が高いので劇中のリア王と道化さながらに道化の方がリードしているバランスになった。
昔の公演では座長が死んだ後ちょっとだれる感じなのが、今回のはドレッサーの悲哀がぴたりと決まった。
紗を使って舞台を舞台裏から透かして見る恰好にした演出はおもしろかったけれど、劇中劇のセリフにエコーがかかっていたのは何かもったいない。せっかくナマで見に(聞きに)来ているのだから、できるだけ生音を聞きたいのです。



