prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
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「空海 KU-KAI 美しき王妃の謎」

2018年03月10日 | 映画
何というか、およそ挨拶に困る大作。

原題が「妖猫伝」で、実際空海より黒い怪猫の方が冒頭から話の軸になっていて、空海が何しに出てきたのかよくわからない。
「薔薇の名前」みたいに中世を舞台に僧が名探偵ぶりを見せるのかと思うとそういうわけでもなく、調べたわけでも推理したわけでもないのにどんどん昔の事情がどういうわけかわかってしまう。

阿部寛が阿倍仲麻呂をやっていて、アベ、アベと呼ばれるのは別に語呂合わせでキャスティングされたわけでないだろうが妙な感じ、しかも直接空海と絡むところがないものだから構成が分裂したみたい。
それどころか楊貴妃と玄宗皇帝のメインプロットと空海との関わり方もずいぶん強引で、もともと時代が違う上に、彼らの事情がなんでああ細かくわかるのか謎。

長安の都の大オープンセットはさすがに大がかりで結局それが最大の見ものになった。
余談だが、陳凱歌の1998年作「始皇帝暗殺」では紫禁城の実物大の大オープンを作り(撮影終了後もロケや観光に使われているらしい)、日本側プロデューサーの井関惺が「中国も人件費が高くなってきたから、こういう(おそらく、「敦煌」みたいな人件費の安さを生かした群衆シーンが見せ場になるような)大作は最後になるだろうといった発言をしていたが、違う意味での大作がどんどん作られている感。

同じ陳凱歌の「PROMISE 無極」もそうだったが、派手なわりに張芸謀みたいな様式化が徹底しているわけではないので(それが必ずしもいいわけではないが)何だかけばけばしくヘンテコな印象が強い。

黒猫が出てくるのがエドガー・アラン・ポーみたいだなと思っていたらホントにそういう展開になるのには驚いた。黒猫のCG演技の感情表現はなかなかのもの。

楊貴妃役のチャン・ロンロンが鼻の高さや色の白さなど西洋人の血が混ざっているのかなと思ったら果たせるかな台湾人とフランス人との混血。すこぶる美人だけれど、西洋風に過ぎないかという気はする。当時の長安が国際都市だったのに合わせたのかもしれないが、それだったらアラブ人やインド人もいていいと思う。

日中合作で何で主題歌(野田洋次郎)が英語なのか、理解に苦しむ。グローバル化とは英語化かと憮然となる。全般に世界の映画、特に大作はグローバル化すると共にドメスティックな味や魅力を薄れさせてきているのは、知らない世界へのアクセス感覚を期待する人間としてはあまり有り難くない。
(☆☆☆)

空海 KU-KAI 美しき王妃の謎 公式ホームページ

空海 KU-KAI 美しき王妃の謎 - 映画.com



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3月9日(金)のつぶやき

2018年03月10日 | Weblog