冷戦の時代っていう設定が効いていて、映画館には豪華なミュージカル映画がかかって、テレビではショー番組がかかっているエスケーピズムの裏に貼り付けた緊張感を出した。
かなりあちこちグロテスクな描写やそれは行き過ぎだろうと思うような行為が描かれるのもこの時代設定だと通ってしまう感じ。
半魚人の眼の透明な膜みたいなものがかぶさっている作りの細かさに感心する。先日アカデミー賞をとった辻一弘の作品らしい。
登場して動き出した時の驚きから、終盤嵐の中立ち上がる場面のほとんど見栄を切るような決まり具合から圧巻。
登場人物たちが口をきけないヒロインをはじめ同性愛者、黒人女性とマイノリティたちが揃った感がある。
彼らと対立するマイケル・シャノンが白人のエスタブリッシュメントの塊みたいで、実はかなりその座が揺るがされる不安感を常に感じているのを出した。最初の方で切断される指というのは端的にいってペニスの象徴だろうが、それを取り戻そうとしたり失敗したりするのがいかにも象徴的。
自己啓発本を読んでたりするのがあまりにそれらしくて何だかおかしい。
彼と上司との会話で朝鮮戦争で戦った相手の事をgook(現在公では使えない主に朝鮮兵に対する侮辱語)と呼んでるのが背景を端的に表している。
彼が今の地位にいるのは上司が朝鮮戦争で上官部下の関係だったから引き立てられただけというのが、地位が盤石のようで実は案外もろいものだとわかる。
随分大きい映画館の二階がアパートになってたりとか、アパートの部屋いっぱいに水を満たしているなど画から先に発想してかなり無理な感じがするのも押し切ってしまっている。
(☆☆☆★★★)
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