prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ウルフズ・コール」

2020年10月08日 | 映画
フランス製の潜水艦もの。
きわめて優れた聴力と分析力で潜水艦の音声分析官をつとめているシャンテレッド、通称”靴下“が、音声分析で迷いを見せたことで艦を急浮上させて直接武力行使に及ぶ事態に発展する。
このミスを個人的に取り返そうと軍の機密性の高いデータにアクセスしようと組織の秩序を逸脱する行為に走る。

アメリカ製エンタテインメントだと、ヒーローとして立たせるために無茶をやっても最終的に辻褄が合うのだが、そうならないのがフランス製。
シャンテレッドが特殊能力を発揮するところはあるのだが、それが事態を進展させはするが解決するわけではない。

敵味方がはっきり分かれた戦いになるのではなく、軍内部で誰が悪いと決められないまま互いに潰し合う羽目に陥るのが、高い緊迫感を維持する一方で最終的にモヤモヤしたものを残す。

フランスがれっきとした原潜や核ミサイルの所有国であることを盲点をつかれたように思い出した。

どこの誰による陰謀なのか、セリフでずらずらっと説明するだけなのでぱっと頭に入りにくいのと、敵役がはっきり姿を見せず、それをやっつけて解決という作りを初めから放棄している。
フランスという国際社会のプレイヤーとしては、メインから外れかけている立ち位置からにふさわしい風景と見える。

女の絡ませ方が意表をつく。よくある色仕掛けでもなければ、単なる彩りでもなく、誰にとっても思いもよらない形で主人公の運命を変えてしまう。あまり例のないやり方。

作品の性格上、音響効果が秀逸。ただ、主人公が頭の中で聞いているであろう音のイメージはなかなか再現しきれていない。