prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ザ・ファイブ・ブラッズ」

2020年10月30日 | 映画
金塊を手に入れる回想シーンでチャズウィック・ボーズマンが若い姿で出てきて、仲間が現在の年取った姿のままで出てくる不思議さ。
なんだか「野いちご」「令嬢ジュリー」の一つ画面に違う時制の人物が同居している技法を思わせたりする。

一番若いボーズマンがすでにあろうことか故人になっているというのも、何か時間感覚を混乱させる。

ジョン・ウーが香港から戦時下のベトナムに向かう三人の青年の友情の破綻を描く「ワイルド・ブリット」でも金塊をめぐって殺し合いになるが、今回も基本は近い。
というか、オリジンはジョン・ヒューストンの「黄金」だろう。
しかしブラザー同士の関係はやや変わってくる。

経済的徴兵制というか、貧困層の若い男は軍隊に行くのが就職代わりという力学から,おのずと軍隊の黒人の割は大きくなるというシステムができているのを改めて示すのがスパイク・リーらしい。

ボートで川を遡っていくシーンに「ワルキューレの騎行」がかかるのはもちろん「地獄の黙示録」のパロディだし、「ランボー 怒りの脱出」でネタにされたMIA(Missing In Action=戦闘中行方不明)などいやしなかったと批判するセリフをちゃんと入れてくる(ランボー2公開時にもそういう批判はあったが無視された)。
「ブラッククランズマン」での「国民の創成」同様、映画も歴史の一部であって、糺されるものは糺されなくてはいけないという姿勢を見せる。