1943年、太平洋戦争中のニュージーランド、米軍のB-17爆撃機に秘密任務と絶対開けてはいけないという鞄を携えたギャレット大尉(クレア⋅グレース⋅モレッツ)が乗り込んできてサモアに飛び立つ。
そこにグレムリンと日本の零戦が襲ってくる。
グレムリンというとジョー⋅ダンテ監督、フィービー⋅ケイツ主演の水をかけると増えるイタズラなぬいぐるみみたいなクリーチャーの方が有名だと思うが、もともと第二次大戦中の飛行中の飛行機のエンジンにイタズラする化け物の都市伝説がもとで、さらにそこから「トワイライトゾーン」の「高度20000フィートの悪夢」にも発展した。
その大もとを再現した格好。
敵の襲撃と平行して、モレッツの任務とは何か、鞄の中身は何かといった謎解きが進む構成。
上演時間は83分という近頃珍しい短さで、正直これだけでちょっと手を合わせたくなる。
冒頭の命令書のアップから、ギャレットなどという大尉はいないといったやり取りの回収など短い中にてきぱきと整理してうまく構成している。
撮り方、演出(中国系女性監督ロザンヌ·リャン)がまた視点をあちこちに散らさず限定していて、前半かなりの尺数をモレッツが鍵をかけて他の乗組員が入ってこられなくした銃座の中だけの一人芝居で通し、その間の乗組員たちの紹介も通常だったらそれぞれの部署についている姿を写すが、イメージカット式に真っ暗なバックに原色のライトをあてたアップで替えている。
(ただキャラクター紹介をはしょったため、キャスティングがやや弱いこともあって、誰が何の部署についているのかわかりにくくなった)
その後も視点の限定は徹底していて、飛行機がアクロバット飛行して姿勢を変えるシーンも飛行機内にアングルを限定するため世界が逆さまになった状態がかなり続く。
激しくあちこちの様子をカットバックすることでスリルを出すのとはかなり違う方法論。
大げさに言うと、ヒッチコックが「救命艇」「裏窓」などで通した方法に通じる。
モレッツは童顔は相変わらずだがいつの間にかえらく堂々たる体格になった。
飛行機のボディにFOOL'S ERRAND(アホの使い走り)という落書きが白痴的グラマー美人の絵と共に描かれている。
米軍の妙な習慣だが、ここではモレッツが乗り込んだ機の乗組員の男たちのひどいセクハラそのまんまの発言と共にあからさまな男尊女卑、女性嫌悪ないし蔑視の現れで、これは完全に娯楽映画以外の何者でもないけれど(だからと言うべきか)それに対するカウンターの立場をとっている。
エンドタイトルに流れる大戦中の米軍の女性兵士たちの実写映像からもそれはうかがわれる。
大戦中の女性兵士というとソ連のそれは有名だが、アメリカにも相当いたらしい。