時あたかも統一教会への恨みが元で安倍晋三元首相が殺された直後の見参になった。
とあるカルトの信者の中年男、若い男、若い女の三人が離れ島で共同生活を送りながら、自分の信心が世界を救うと本気で考えて修行に励んでいる。
孤立した環境で信仰に凝り固まった連中が一方で腹痛や性欲といった生理的な現実と葛藤するのが不気味にしておかしくもある。
後半、現実かと思っていた状況が夢か幻想でしたという調子で落とす場面が増え、ワンカットで過去の情景が入り込んだりする。
このあたり、思い込みの世界に生きている信者の心象風景の反映でもあるだろうし、映画表現としても魅力的。
「先生」と呼ばれるカルトのトップを原作者の山本直樹が演じているのが、この世界の大元を作った人としてぴったり。
宗教カルトというばかりでなく、左翼カルトの要素も(幻想シーンの中だが)入ってくる。
山本が連合赤軍をモチーフにした大作「レッド」を描いていたのも思い出す。
クライマックスの機動隊の出動も左翼運動の弾圧のイメージっぽい。
風景がきれいなのがかえって不気味。