prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「かぶりつき人生」

2022年04月09日 | 映画
神代辰巳監督のデビュー作。
ただし大コケでしばらく干されたらしい。

男運が悪いくせに男がいないといられない母親を持った娘。
ストリッパーの世界を描いているのはいかにも神代らしく、女優をやってみないかと誘われて映画に出て自分が映っているフィルムのダビングをしているあたりの虚実皮膜感はのちのロマンポルノ「一条さゆり 濡れた欲情」で一条さゆりその人を自身の役で出したのにつながる。

1967年と半世紀以上前のとあって、やはり描写としていかにも控えめで神代の本領はやはりロマンポルノであからさまな描写ができるようになってからということになるみたい。

とはいえ、オール大阪ロケ、オール同時録音のねちょねちょしたリアリズムは当時の記録としても貴重。
姫田真左久の撮影が本当に凄い。室内シーンでも窓の外に何かしら動いているものが映っていて生きものが充満している感じ。

調べたところ主演の丹羽志津は二本、殿岡ハツエは十一本しか出ておらず、その後の消息も不明。

ロケ地
【大阪府】大阪市(ダイコー、九条OS劇場、飛田OSミュージックホール、ジャンジャン横丁、西成区岸公団アパート)
【福井県】敦賀市






「モービウス」

2022年04月08日 | 映画
吸血鬼もののバリエーションなのだけれど、商売上マーベルユニバースの一部として位置づけなくてはいけないものだから、なんだかキャラクターの配置がごたごたしてすっきりしない。
飛んだり床や壁に激突したりするのに合わせて体から何か滲んで流れるような視覚効果が目新しい。

ジャレド⋅レト(に限らない)が作品によって極端にメイクで姿形変えてしまうので、なんかアニメないしコミックの作られたキャラクターに声アテるのに接近している感で、何がリアルな俳優の肉体なのかよくわからなくなってくる。
舞台だったら何も使わなくても人外の存在になりきれると思うのだが。

 - YouTube

「モービウス」 - 公式サイト

「モービウス」 - 映画.com

Morbius- IMDb

「TITANE チタン」

2022年04月07日 | 映画
実は上映途中で二人ばかり出て行ってしまったのだが、それもムリない。
何しろ「リアリティ」のある世界を通常の「感情移入」して見るという「普通」の見方はまずムリ。

たとえばヒロインのアレクシアは途中で自分で髪を切って自分で鼻を殴って曲げて大きく外観を変えるのだが、十年前に出ていった息子を探している、見ればわかるという中年男ヴィンセントがそれを見て息子だと言い出して自宅に連れ帰る。
しかしいくら顔かたちを変えたといっても女だということは隠しようがないのだが、ヴィンセントはヒロインが裸になって乳房と妊娠しているお腹まで見ていても、ずうっと息子扱いし続け、ついに性別の違いを取沙汰することはない。
普通ならありえない話。つまりこれは普通の世界ではない。

アレクシアは愛称でアレックスと男名前で呼ばれたりする。(余談だけれど「フラッシュダンス」と「危険な情事」のエイドリアン・ライン監督のヒロインの名前がともにアレックスという男名前なのはどういうことかと聞かれたラインがしれっとそんなの初めて知ったととぼけていた。
エイドリアンは女名前だがライン自身は男。
妙に性差と名前が混乱している)

ヴィンセントは消防夫というかなりマッチョな世界で自分を神だとさらっと言ったりしている。
男ばかりの世界に女が一人混ざったら通常どれだけ仲間外れにされるかと思うが、いかに隊長のヴィンセントが睨みを効かせているとはいえ、アレキシスを女として眺めわたすことはない。

バスの中で黒人女性とアレキシスとが同じ列の両端に乗っているところで、後部座席の男たちが聞くに耐えないような卑猥であくどく女性差別的なからかいの文句を並べるのだが、それが黒人女性に向けられているのかアレキシスに向けられているのか、両方なのか、明らかにわざと曖昧な描き方をしている。
つまりアレキシスはここでも女として見られるかどうかの境界線上にいることになる。

ヒロインは子供の時に交通事故で負傷してチタンを頭部に埋め込まれたのだが、その無機物の金属と有機物の肉体とが一体化して暴走していく。
無機物と有機物との混淆という物質感で、これに似た先行作品というのはいくつもあって、「鉄男」「ビデオドローム」などのクローネンバーグ作品、諸星大二郎「生物都市」、「デモン・シード」などが思い浮かぶ。
それらに連なって独自なのはヒロインが男目線で見られる女という意味付けから外れていること。
性別と関係ない無機物、つまり自動車とセックスして妊娠するという奇想天外な着想もそこにつながると思う。

音楽というより音響効果が絶大。このあたりも「鉄男」っぽい。





「メランコリック」

2022年04月06日 | 映画
殺し屋が殺した死体を古い銭湯で始末する、という相当にブラックな設定だが、仲間以外のキャラクターがあまり出てこないので、自然にこちらも慣れてしまう。
古い風呂屋ののんびりした風情とブッソウな出来事とのコントラスト。

主人公みたいに東大出のくせにまともに就職しないでバイトで食いつないでいる奴なんてけっこういそう。





「ベルファスト」

2022年04月05日 | 映画
ゴミ箱の蓋を盾に、木のオモチャの剣を持って空想のドラゴンと戦っている少年(監督脚本のケネス·ブラナーの分身)の身近に火を吐くドラゴンならぬ宗教的排斥の暴徒が投げる火炎瓶の炎が上がる冒頭から、少年時代の回想という内容と一見裏腹な不穏な空気がたちこめる。

一方でそれは子供の空想にもつながっているわけで、殺伐とした暴力だけではない。
特に家族の存在は大きく、かといってたとえば母親がいかにも子供から見た母親的な保護者という役割だけでなく、父親とクラブで歌って踊るところなど子供とまた離れた女としての顔を見せる。

アイルランド出身に優れた俳優が多いせいもあるだろうが(日本でいうと在日に近い存在という解説もある)、キャスティングが知名度のあるジュディ·デンチを除いて実際のアイルランド系の俳優で固めてある。
今風の当時者性の重視でもあるだろう。

北アイルランド紛争の背景は特にわかりやすく説明していないし、それで問題はない(ややこしすぎて描き切れるものではないし)。とにかく暴力は論外というのに尽きる。

身近な家庭と宗教·民族といった大文字の世界とがシームレスに行き来する描き方。
カラーとモノクロの使い分けなど良くも悪くも監督ブラナーの身上であるわかりやすすぎるところが出ている。

英国籍のジョン·ブアマン(アイルランドとスコットランドとオランダの血が混ざっている)のやはりV2ロケットが降り注いでいる戦時中のロンドンでの少年時代を描いた自伝的作品Hope And Glory(「戦場の小さな天使たち」って邦題は使いたくない)のふてぶてしいユーモアを思いだした。





「ペトルーニャに祝福を」

2022年04月04日 | 映画
マケドニアというあまり馴染みのない国(アーメンではなくアミンと発音している)の話なのだが、ミソジニー=女性嫌悪の男の精神構造が国境をこえて日本でもありがちなのとそっくりなのに驚かされる。
日本でも少年野球でグラウンドに入れるのは男だけなんて所が実際にあると最近聞いて呆れかえったもの。

男だけに許された川に投げ込んだ十字架を奪い合う儀式にヒロインが飛び込むところの表情を見せないのがかなり微妙で、主演のゾリツァ・ヌシェバの全編にわたる固い表情と共に色々な解釈の余地を残す。
はっきり社会の矛盾や理不尽に意識的に気づいているのかどうかはっきりさせていない、かなり直観的に感じている段階で牛みたいにガンとして動かなくなるように表現していると思える。





 

「ナイトメア・アリー」

2022年04月03日 | 映画
ギレルモ⋅デル⋅トロ監督とはいっても今回はファンタジーの要素は薄いが、絵柄は共通している。
カーニバルの場面はもちろんだが、中盤のリッチな生活でも独特のデフォルメが入って裏にダークな要素が張り付いている。

ケイト⋅ブランシェットの精神科医が含めて患者をイリュージョンを操って騙すあたり、道具立てはリッチで精錬されていても見せ物小屋の千里眼と一緒というアイロニー。
大金持ちでも幸福とは縁遠い。
豪華なキャストも、むしろアイロニカルな意味合いで使われているみたい。

カーニバルに始まりカーニバルに終わる、そこに見せ物になっている胎児が置かれることで、生そのものが生まれた時からダークな面が張り付いているとでもいった世界観が窺われる。





「オールド・ジョイ」

2022年04月02日 | 映画
アメリカのインディペンデント映画作家、ケリー·ライカートの長編第二作。

妊娠中の妻がいる男が旧友と二人でドライブに出かけ、僻地の誰もいない温泉に浸かる、というお話とするとおそろしくシンプルなもの。

妻に断るのもおそるおそるという感じで、ジョン·ブアマンの「脱出」に出てきたようなすごい僻地っぷりと、家庭にいたくない男の感覚とがあれのマッチョっぷり(が途中で完全に無力になるのだが)とは正反対のおそるおそる感となんともいえない微妙な息苦しさが通奏低音になる。

冒頭のカーラジオの局にかけてくる聴取者の電話発言が共和党と民主党支持者の間の断絶分断を示す。
一方でアメリカの自然美もたっぷり見せる。

インディーズらしく、面白おかしいという作りではないのだが、妙に残るものはある。





2022年3月に読んだ本

2022年04月01日 | 
読んだ本の数:23
読んだページ数:5004
ナイス数:0

読了日:03月01日 著者:茨木 のり子




読了日:03月07日 著者:佐伯俊道




読了日:03月07日 著者:佐伯俊道




読了日:03月08日 著者:明石 和康



読了日:03月10日 著者:千葉 真一








読了日:03月16日 著者:山本直樹




読了日:03月16日 著者:山本直樹




読了日:03月16日 著者:山本直樹




読了日:03月16日 著者:山本直樹




読了日:03月16日 著者:谷川 俊太郎




読了日:03月16日 著者:澤田 大樹




読了日:03月17日 著者:山本 信太郎




読了日:03月19日 著者:司馬遼太郎




読了日:03月19日 著者:司馬 遼太郎




読了日:03月19日 著者:山本直樹




読了日:03月19日 著者:さいとう・たかを




読了日:03月19日 著者:さいとう・たかを


 
読了日:03月20日 著者:町山 智浩




読了日:03月29日 著者:中川右介




読了日:03月30日 著者:諸星 大二郎




読了日:03月30日 著者:諸星大二郎



読了日:03月31日 著者:谷口 ジロー,狩撫 麻礼