文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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書評:宇宙のダークエネルギー 「未知なる力」の謎を解く

2014-08-27 19:04:13 | 書評:学術教養(科学・工学)
宇宙のダークエネルギー~「未知なる力」の謎を解く~ (光文社新書)
クリエーター情報なし
光文社


 宇宙には、莫大な量が存在しながらも、なんだかよくわからないものが2つある。ダークマターとダークエネルギーだ。宇宙のエネルギー(アインシュタインのエネルギーと質量の等価則により、質量と思ってもよい)のうち、バリオン(通常の物質)は、わずか4%しかないのだ。残りの96%のうち、23%は、ダークマター、73%はダークエネルギーなのである。ダークマターは、目には見えないが、強い重力源となっている。これに対して、ダークエネルギーは、宇宙を加速膨張させる原因だ。本書、「宇宙のダークエネルギー 「未知なる力」の謎を解く」(土居守/松原隆彦:光文社新書)は、このうちダークエネルギーについて、理論と観測の両面から説明したものである。

 かって、宇宙が膨張していることを発見したのはハッブルという天文学者だ。宇宙論の基礎となる理論は、アインシュタイの一般相対性理論だが、彼には宇宙は、膨張も縮小もしない定常的なものという信念があった。彼が、自ら導き出した方程式から、静止宇宙の解が得られるように、宇宙項というものを付け加えたことは有名だ。彼は、ハッブルの発見を知って、宇宙項を導入したことについて、「我が生涯最大の過ち」と嘆いたという。しかし、宇宙が加速膨張していることが分かると、これを説明するものとして、宇宙項が復活するというのだから、不思議なものである。

 宇宙項は、アインシュタインが恣意的に付け加えたものだが、宇宙が膨張するにつれて増えていくエネルギーがあればこれと同じ働きをする。これがダークエネルギーと呼ばれるものだが、その正体は現在のところまったくの謎だ。

 近年精密な観測ができるようになったのは、CCDカメラの貢献が大きい。肉眼の数百倍もの感度を持つこのカメラやコンピュータの発達により観測技術は格段に進歩してる。それでは、どうやってダークエネルギーを測定するのか。これには、Ia型超新星、宇宙背景放射におけるゆらぎ、銀河の分布、重力レンズ効果などを利用するようだ。今は謎でも、やがてはその正体が解き明かされる日が来るだろうと考えると、胸がわくわくする。

 物理学は、理論と実験・観測が互いに刺激を与えながら発展してきた学問だ。本書は、これら両面からバランスよく記述されている。観測した現象を説明できる理論と、実際の現象によって裏打ちされる理論の二つはあらゆる学問にとって、車の両輪なのである。この発展モデルは、科学技術のみならず社会科学や人文科学にも適用できるのではないだろうか。

☆☆☆☆

※本記事は、姉妹ブログと同時掲載です。
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