文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

絶対正義

2017-02-08 11:11:12 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
絶対正義
クリエーター情報なし
幻冬舎

・秋吉理香子

 これは相当嫌な気分になる作品だ。主な登場人物は、山梨の公立高校での同級生だった、高槻範子と和樹、由美子、理穂、麗香の5人。和樹たち4人は、5年前に皆で範子を殺していた。ところが今になって、4人の元に、死んだはずの範子からパーティの招待状が届いたのである。確かにあの時、範子は死んでいたはず。ならば、誰が招待状を出したのか。

 作品を読み進むにつれて、4人が範子を殺したいくらい嫌っていた理由が明らかになってくる。とにかく、この範子というのがとんでもない女だ。10m以内周りには絶対に近づいて欲しくないような嫌なキャラなのである。

 範子は、自分が正義と思い込んでいるもののために、周りの人間のあら探しを徹底的に行い糾弾する。彼女の基準は、規則と機械的に比べてみてどうかということだけ。そこから1mmでもはみ出していると許せないのである。その背景や実情、規則の合理性などは、いっさい考えない。そして、ちょっとしたことを、さも重大な事のように騒ぎ立て、大問題に発展させるのだ。

 その執拗さはほとんどビョーキといっていいほど。4人はそれに助けられたこともあったが、それ以上に深刻な被害を受けていた。しかし、形式上は正論のため、なかなか反論できない。

そもそも規則というものは、さまざまな人間の利害関係を調整するのが目的ではないのか。当然そこには人間の感情というものが入ってくる。しかし範子はそういったことを全く理解しようとはしない。自分勝手な正義に酔いしれているのだ。

 実際の裁判の場でも、情状酌量というものがあるし、刑法の刑罰もそれを考慮してある程度の幅を持たせている。範子には、きっと大岡越前の名裁きなんて、絶対に理解できないことだろう。

 作品の終わり方も、ただ嫌な気持ちだけが残るようなものだ。しかし、ここまでではなくとも、似たような人間は案外といるような気がする。ご用心、ご用心!

☆☆☆☆

※初出は「本が好き!」です。

コメント
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