ミクロコスモス: 森の地衣類と蘚苔類と | |
クリエーター情報なし | |
つかだま書房 |
・大𣘺弘、(解説)田中美穂
本書を一言で表現すれば、苔(蘚苔類)と地衣類の写真集である。苔はなんとなく分かると思うが、地衣類というのは、菌類に藻類(シアノバクテリアや緑藻)が共生しているものだ。一般にはまとめて苔と思っている人が多いだろうが、苔と地衣類は全く異なるものである。苔は植物であるのに対して、地衣類はキノコやカビの仲間で植物とは一線を画しているのだ。もっとも両者を合わせて広義のコケという場合もあるからちょっとややこしい。
ページを開くと、なんとも幻想的で不思議な世界が広がる。コケとはこれほどまでに美しいものだったのか。妖精がこの周りに飛び跳ねていても全然不思議とは思えない。むしろ本当にどこかに隠れていそうである。
実はこの春京都に行ってきた。京都で苔といえば苔寺(西芳寺)だ。昔は拝観料を払えば気軽に入れたのだが、苔が痛むという理由で大分昔に事前申し込み制になり敷居が高くなった。私が行ったのは嵯峨野の祇王寺。ここの苔も美しい。こんど苔の生えているような場所に行くことがあれば、じっくり観察をするのもいいだろう。きっとその美しさに魅了されることだろう。
最後にひとつ改善点を挙げたい。掲載されているコケの種類が一応掲載されてはいるのだが、写真の掲載されている場所ではなく、最後に纏められているので、いちいち見比べなくてはならない。写真と同じページに入れることはできないのだろうか。
(注)本書評においては、「コケ」という言葉は、蘚苔類、地衣類を含めた広義の意味で使っています。
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