今は懐かしき昭和の時代、力道山やジャイアント馬場、アントニオ猪木といったプロレスラーは、今とは比較にならないくらい、お茶の間のヒーローだった。なにしろデストロイヤーの4の字固めや猪木のコブラツイストなんかは男の子の必修科目だった観のあるような時代だった。本書は原作が梶原一騎となっているが、別名の高森朝雄で原作を書いたジャイアント馬場の一代記である。(高森朝雄で書かれたもので有名なのは「あしたのジョー」だろう。) 絵はタイガーマスクなどで知られる辻なおき。
この部分は、まずありえないと思う。馬場が力道山道場への入門時に、「死にもの狂いの力」を教えるため、手足をバーベルに縛りつけて動けなくされ、蜂の巣を投げ込まれるのだ。漫画では実話そのものだと書かれているが、巣はどうみてもアシナガバチのものである。この物語を漫画では昭和35年4月1日のことだと書かれている。しかしアシナガバチやスズメバチは、毎年巣をつくる。4月1日に巣がこれほど大きくなっていることはまず考えられない。
そしてスズメバチにあれだけ刺されれば、まず命はないだろう。アシナガバチだって危ない。それに馬場は手足をバーベルに縛り付けられ殆ど身動きの取れない状態である。ミツバチなら針が体に残るがそれらしきシーンはない。動けば蜂は興奮して攻撃するが、動かなければ、これだけ刺されることはないのではないだろうか。なによりこの時期、力道山はブラジルへ遠征しているはずだ。4月1日に馬場と対面するというのは時期が合わない。
この巻で描かれるのは、馬場のプロレスラーとしての駆け出し時代。力道山の弟子になってから、ニューヨークでの武者修行、人間発電所と言われたブルーノ・サンマルチノとの激闘と友情。日系人少年との友情。ニューヨークのプロモーターの下種振り。
まあ、よくも悪くも昭和感満載の作品だろう。
☆☆☆