池田信夫氏は自分のブログ「池田信夫 blog part2」の「生産性格差デフレ」と言う記事で次のように述べている。
「このように大きな生産性の格差がある一方で賃金が均一だと、衰退産業はコストが圧迫されて退出し、労働人口が成長産業に移動して、全部門で限界生産性は均等化するはずだからである。しかし日本では労働市場を通じた生産性の均等化メカニズムが機能しないため、20年にわたって過剰雇用と賃金の抑制が続いている。」
「限界生産性が均等化するはず」というのは、文章では分かりにくいので、数式に起こして見れば次のようなことだろう。
簡単のために2つの産業だけが存在するモデルを仮定し、それぞれの生産性をFA(x)、FA(y)とする。ここで、x,yはそれぞれの産業への労働投入量である。ここでも説明を簡単にするため、変数は労働投入量だけであると仮定している。
全生産性をF(x,y)とすれば、
F(x,y)=FA(x)+FA(y)
これが、
x+y=c(cは定数:労働力のトータルが一定)
の条件のもとで、最大となるには、
F(x,y)-λ(x+y-c)
をx,yで偏微分したものを0と置くと
∂F/∂x=∂FA/∂x-λ=0
∂F/∂y=∂FB/∂y-λ=0
であるから結局
∂FA/∂x=∂FB/∂y=λ
となり、二つの産業の限界生産性が均等化するときに、もっとも全体の生産性が高いことになる。
しかし、池田氏の主張には次のような仮定が含まれていることに注意しなけらばならない。
まず、両産業の労働の質が均一であることである。x+y=cといった計算ができるのは、労働力自体が均一でなければありえない。しかし、メーカーの労働者と散髪職人が簡単に、互いの労働を交換できるだろうか。
もうひとつ大きな仮定は、成長産業が存在するということである。しかし、自分の産業が沈みかけた船の場合、成長産業があれば、そこに労働需要があるだろうから、当然労働者は新しい船に乗りたいと思うだろう。労働市場の硬直性といっても、自発的な転職の自由がないわけではないのだ。現時点で、いったいどの船に乗れと言うのか。
それに、労働市場の硬直性を妨げているのは、解雇規制や賃金の硬直性などではなく、むしろ企業の採用における新卒偏重の慣習の方が大きいのだと思う。雇用の流動化を高めるには、ここを改善すべきだと思うのだが。
(補足)
上に示したような計算手法は、他の分野でも良くつかわれる。例えば電気工学で言えば、火力発電所の燃料費を最小にするためには、どのような運転をすればよいかなどが計算できる。ちなみに、難易度で言えば、第二種電気主任技術者試験(電験2種)程度である。
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「このように大きな生産性の格差がある一方で賃金が均一だと、衰退産業はコストが圧迫されて退出し、労働人口が成長産業に移動して、全部門で限界生産性は均等化するはずだからである。しかし日本では労働市場を通じた生産性の均等化メカニズムが機能しないため、20年にわたって過剰雇用と賃金の抑制が続いている。」
「限界生産性が均等化するはず」というのは、文章では分かりにくいので、数式に起こして見れば次のようなことだろう。
簡単のために2つの産業だけが存在するモデルを仮定し、それぞれの生産性をFA(x)、FA(y)とする。ここで、x,yはそれぞれの産業への労働投入量である。ここでも説明を簡単にするため、変数は労働投入量だけであると仮定している。
全生産性をF(x,y)とすれば、
F(x,y)=FA(x)+FA(y)
これが、
x+y=c(cは定数:労働力のトータルが一定)
の条件のもとで、最大となるには、
F(x,y)-λ(x+y-c)
をx,yで偏微分したものを0と置くと
∂F/∂x=∂FA/∂x-λ=0
∂F/∂y=∂FB/∂y-λ=0
であるから結局
∂FA/∂x=∂FB/∂y=λ
となり、二つの産業の限界生産性が均等化するときに、もっとも全体の生産性が高いことになる。
しかし、池田氏の主張には次のような仮定が含まれていることに注意しなけらばならない。
まず、両産業の労働の質が均一であることである。x+y=cといった計算ができるのは、労働力自体が均一でなければありえない。しかし、メーカーの労働者と散髪職人が簡単に、互いの労働を交換できるだろうか。
もうひとつ大きな仮定は、成長産業が存在するということである。しかし、自分の産業が沈みかけた船の場合、成長産業があれば、そこに労働需要があるだろうから、当然労働者は新しい船に乗りたいと思うだろう。労働市場の硬直性といっても、自発的な転職の自由がないわけではないのだ。現時点で、いったいどの船に乗れと言うのか。
それに、労働市場の硬直性を妨げているのは、解雇規制や賃金の硬直性などではなく、むしろ企業の採用における新卒偏重の慣習の方が大きいのだと思う。雇用の流動化を高めるには、ここを改善すべきだと思うのだが。
(補足)
上に示したような計算手法は、他の分野でも良くつかわれる。例えば電気工学で言えば、火力発電所の燃料費を最小にするためには、どのような運転をすればよいかなどが計算できる。ちなみに、難易度で言えば、第二種電気主任技術者試験(電験2種)程度である。
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