私は学生時代、京都の洛北にある学生用のアパートに住んでいた。そこは、正式名称を「水明荘」と言ったのだが、私の大学仲間からは、もっぱら「雀荘(すずめそう)」と呼ばれていた。
雀荘の「すずめ」とは「麻雀」の「ジャン」のことである。当時の学生は、娯楽になるようなものが少なく、学生の楽しみと言えば、酒か映画か麻雀位であった。このアパート、しょっちゅう、そこらじゅうで、麻雀牌をかき混ぜる、のジャラジャラと言う音が響いており、遊びに来た大学の友人が、これに呆れて命名してくれたのである。
私も、何回引っ越そうと思ったか知れないが、いつのまにかここの水になじんで、気がつけば、学生生活を終えるまで居ついてしまった。実は、この環境を嫌って出て行く人も、結構居たのであるが。
学生アパート仲間の一人に同じ歳のS君がいた。彼は、予備校生であり、このような悪環境にも染まらず、マイペースで受験勉強を進めていた。何しろ、このような環境にも関わらず、夜は8時か9時には寝てしまい、朝は、我々が今から寝ようかというときに既に目ざめていた位だ。あの環境の中で、それに染まりもせず、、引越しもせずに、自分の生活習慣を貫き通したというのは賞賛に値するであろう。
だが、やはり、環境が災いしたのか、その後2回受験を失敗し、郷里に帰ってしまった。
その1年後、再び彼が私たちの前に姿を現した。聞けば、O大学に合格したので、またこのアパートに住むことにしたとのこと。アパートや下宿は探せばいくらでもあったと毛のだが、なんとも奇特なことである。
彼は、出戻ってきても、相変わらず、私たちの不規則な生活を横目で見ながら、規則正しい生活を送り続けていたのだった。
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その彼は、今では、立派な警察官として活躍している。
※ 本記事は、2006年02月20日付で「時空の流離人」に掲載したものに加筆修正を加えたものです。
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