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中華の通の方達が「お店の味は炒飯を食べてみればでわかる。」などとおっしゃいます。私など、一皿$20の炒飯も$100の炒飯もお腹がすいてガツガツと食べるときはどれも美味しく思います。香港のお安い食べ物屋のメニューの炒飯の数は数知れず、ちょっとした具材の組み合わせでいくらでも炒飯なんて作れます。
30数年前、香港に渡って初めの年でした。まさかそこから30年も香港にいるとは思ってもいませんでした。ですから貪欲にあらゆるものを食べました。お金もありません。専ら地元の人と同じお安いお店で食べます。ある日、隣の席の人が日本のチキンライスに似たものを食べています。広東語がまだ分からない時でしたから注文は指差しで隣の席の人のチキンライスと思われるものを指しました。出て来たものはハムの細切れと卵だけが入ったケチャップ炒飯です。しかも大皿にどんと入っています。お安いお店では重労働者の人が昼間からビールを飲みながらのお昼ご飯です。お米の種類も違う、ケチャップも違う、油も違うその炒飯の美味しかったこと、よく覚えています。その時、「西炒飯」と言うのがケチャップ炒飯の名前だと知りました。西洋から入って来た調味料「ケチャップ」を使うからです。
急に炒飯が食べたくなりました。あり合わせのもので作ります。もちろんケチャップ炒飯です。中華の炒飯には滅多に玉ねぎは入りません。その代わりしょうがを使います。手元にあったグリーンピースとチキンの「西炒飯」です。 湯気が立っている間に急いで口に運びます。ちょっとだけ私流にしました。チキンを炒める時に「クミンシード」をひとつまみ入れました。「クミンシード」はカレーの味、香りの元です。でもケチャップとの相性もよく馴染みます。
30年の香港生活の始めの1年、まだ30歳の初めだった私は貪欲によく食べました。思い出の食べ物はあの1年だけでも盛り沢山です。帰国前「フカヒレスープなんてもういらない。」などと言うほど香港での30年は食べ物と深い関係を持った時間でした。