マリヤンカ mariyanka

日常のつれづれ、身の回りの自然や風景写真。音楽や映画や読書日記。手づくり作品の展示など。

芥川龍之介の『桃太郎』

2013-11-22 | book
息子がうんと小さかった頃、寝付きが悪くて、
絵本を読んだり歌を歌ったり、
最後に即興で出鱈目な話をしたりして苦労しましたが、
戦隊モノやウルトラマンが好きな彼は「桃太郎」がお気に入りでした。
私が知っている桃太郎といえば「 ♫  もーもたろさん~ ♬」の歌で
その歌を基に適当にアレンジして話しましたが、
その時、正義の味方の桃太郎がコテンパンにやっつける相手だから
鬼をよっぽど悪者にしておかなければ筋が通らない、
どうやったら鬼が、桃太郎がやっつけるに値するほどの、
恐ろしい悪者である、という証明が出来るのだろうといろいろ考えました。
「桃太郎」はシュールな猿蟹合戦の物語と違ってあまりにも単純な物語です。


最近、芥川龍之介が「桃太郎」のパロディを書いていることを知り、
早速図書館で借りて読みました。

書かれたのは1924年、大正の終り、
日本は軍事力をどんどん強化して、植民地拡張を進めている時代で、
その時代を知らない私にはわからないことではありますが、
行け行けムードの一方、暗い予感が霧のように社会を覆い始めていたのではないでしょうか。


芥川龍之介は短いおとぎ話の形を借りて、
鬼と人間の立場をひっくり返して、
人間の愚かさを、人々を戦争へと向かわせようとする社会を、
痛烈に批判しています。
けれど、どんなに抵抗しても、血が流されても、
戦争を望む(孕む)実(桃)は生まれ続けている、、、というつらい結びに、
芥川の絶望の深さを感じます。


そして今、
この短編は全然古びることなく、
というか、まるで、「今」を書いているのではないかと思うほどです。
切れのいい文章もまるでつい最近書かれたもののようで、
高校生の時来の出会いですが、またまた芥川龍之介が好きになりました。
コメント (1)
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