夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『地獄でなぜ悪い』

2013年10月11日 | 映画(さ行)
『地獄でなぜ悪い』
監督:園子温
出演:國村隼,堤真一,長谷川博己,星野源,二階堂ふみ,友近他

『ウォーム・ボディーズ』『私が愛した大統領』を観てから、梅田ブルク7へ。
前回来てから3カ月半、その間に絨毯が敷き変えられたのかシックに。
あまり清潔感のなかったロビーもなんだか落ち着いた感じになっていました。

この日の本命はこれでした。

観るにはいつも勇気を要する園子温監督。
『冷たい熱帯魚』(2010)と『恋の罪』(2011)で血ドバドバには免疫ができたものの、
まだまだスプラッタは苦手な私、本作もおそるおそる観に行ったら……面白すぎ。

暴力団武藤組の組長・武藤(國村隼)は、敵対する組員に自宅へと乗り込まれる。
武藤自身は新しい愛人(神楽坂恵)に店を持たせてやろうと不在。
武藤の妻・しずえ(友近)がひとりで包丁を武器に、乗り込んできた組員を次々と刺し、
正当防衛を主張するも過剰だとして懲役10年の刑を喰らう。

刺された組員のうち、唯一命を取り留めたのが池上(堤真一)。
怒り狂った武藤に組長(諏訪太郎)が生き埋めにされたのをいいことに、
以後、自分が組を仕切るとして、池上組の看板を上げる。

あと10日でしずえが出所するという頃、武藤は焦りを隠せない。
というのも、かつては人気子役タレントだった愛娘のミツコ(二階堂ふみ)は、
しずえが起こした事件のせいでCMを打ち切られたが、ミツコを女優にするのはしずえの夢。
自分の代わりに敵の組員のタマを取ったしずえのため、
出所時にはミツコ主演の映画を見せてやると、武藤は約束していたのだ。

実は知人の映画監督に頼み込んでその話は着々と進んでいたのだが、
あともう少しでクランクアップというときに、ミツコは男と逃げ出してしまった。
ミツコはその相手の男(三浦誠己)からはすでに捨てられてしまっていたが、
街角で見つけた冴えない男・公次(星野源)に恋人のふりをしてほしいと頼む。
何かあらがえない力を感じ、ミツコの言うとおりにする公次。
ところがふたりでいるところを武藤組の組員に見つかり、連れ戻される。

殺されるにちがいない公次を助けようと、
父親の武藤の前でミツコが苦し紛れにいったひと言は、「この人、映画監督なの」。
クランクアップ前に逃げ出したのは、ダサい役だったから。
私は絶対に主演、それもカッコイイ役じゃないと嫌。この人なら撮ってくれる。

納得した武藤は、公次を監督に、しずえの出所までに映画を撮ることに。
しかし、公次には映画の知識なんてひとつもない。
そこで偶然見つけたのが「映画の神様」の降臨を頑なに信じる青年・平田(長谷川博己)の電話番号。

詳しい事情は聞かぬまま組事務所へとやってきた平田とその仲間、
そして、アクションスター志望で平田と行動を共にしながら、
この話の直前に夢をあきらめて中華料理店でバイト中だった佐々木(坂口拓)。
武藤組が池上組に本気で殴り込むところを撮ろうという話になり、
あろうことか平田は狂喜。まさに願ったり叶ったりのシチュエーションだとはしゃぐ。

池上組にも伝えておいたほうがいいという平田の提案で、
奇襲ではない、あらかじめ承諾された殴り込みが。
「よぉい、スタート!」の合図のもと、撮影が開始されるのだが……。

あまりに楽しかったので、備忘録代わりにほとんど書いちゃいました。
血は確かにドバドバ飛びますが、これまでの作品とちがい、
ニセモノ丸出しなおかげで怖くありません。笑えます。

これだけ劇場に笑いが飛び交う園監督作品ははじめて。
武藤邸に乗り込んでからというもの、ミツコのファンになってしまった池上役の堤真一は、
その表情だけで観客を存分に笑わせてくれます。

佐々木のバイト先の店主にはでんでんが扮し、片言の日本語にこれも爆笑。
古びた映画館の映写技師にはミッキー・カーチス、券売りのおばちゃんは江波杏子。
看板を吊り変えるのは板尾創路、刑事には渡辺哲。
波岡一喜や成海璃子もなんちゅうことない役で顔を見せて、とにかく楽しい。
『箱入り息子の恋』が記憶に新しい星野源は、主題歌の作詞作曲・歌うところまで担当して、
多才な人だなぁとあらためて感心しました。

真面目にバカをやる。映画愛に溢れています。
「金のために映画を撮るんじゃない。
永遠に刻まれる映画を1本撮れたら、死んだってかまわない」。

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