『そして父になる』
監督:是枝裕和
出演:福山雅治,尾野真千子,真木よう子,リリー・フランキー,
二宮慶多,横升火玄,風吹ジュン,國村隼,樹木希林,夏八木勲他
とうぶん出張はないはずだったダンナが9月末に急にタイへ。
いつ帰国できるかまったく不明なため、飲み会などの予定を入れることもできず、
しかし今日明日帰国しないとわかっているならば、
映画ぐらいは観に行っても大丈夫かしらんと、夜な夜な映画を観ること2週間。
ダンナが急に出張になった日にダンナ実家に寄ったら、
義母は「そんなに急に出張になったの。あんた、そら寂しいやろねぇ」。
それを聞いた義父が「なんでや。息抜いたらええがな。羽伸ばせや」。
はい、思いっきり羽を伸ばしてま~す。(^O^)
あと数日でホントに帰国するようなので、映画三昧もじき終了。
てなわけで、この2週間に書きためたものを間を置かずにUPします。
これは『謝罪の王様』の翌日、109シネマズ箕面にて。
『奇跡のリンゴ』を観に行ったさい、義母が「あれも観たいわ」と言っていたのが本作。
カンヌ国際映画祭で話題になったから興味を持ったのでしょうけれども、
是枝裕和監督のこれまでの作品は決して万人受けするとは思えません。
それに、カンヌの受賞作と言えば『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)のように、
普段あまり映画を観ない人が観に行ったら呆然としたなんて例もありますから、
義母にはそういう話もしつつ、それでも観たいですかと尋ねました。
前回、シネコンに驚き、劇場で観るのがやみつきになりそうだと喜んでいた義母は、
「それでも観たい」とのこと。ほなら行きましょかということで。
60年前に映画を観たきりの義父も誘いましたが、ニコニコしながら「やめとくわ」。
義母とふたりでしつこく誘ったら、「あんた(=義母)と一緒に観とうないねん」。
お父さん、それ、暴言ですやん。ま、快く送り出してくれました。
大手ゼネコンに勤務するエリート社員の野々宮良多とその妻みどり。
仕事仕事で妻子と過ごす時間は少ないが、自宅はまるでホテルのような高層マンション。
何不自由ない毎日を送り、6歳になる息子の慶多のお受験戦争もクリア。
慶多のおっとりした性格が気になるものの、半年後の小学校入学を待つばかり。
ある日、慶多を出産したみどりの地元の病院から連絡が入る。
病院を訪ねると、慶多は同日に生まれた他人の子どもだと告げられる。
赤ん坊の取り違えなんて今どき信じられない、
田舎の病院で出産するからだとみどりにも怒りを向ける良多。
慶多の本当の親は、小さな電器店を営む斎木雄大とその妻ゆかり。
良多夫婦の実の息子は、雄大夫婦の長男として育った琉晴。
弟と妹もいる琉晴は活発で面倒見のいい兄らしいが、
お世辞にも品がいいとは言えない、がさつな雄大夫婦のもとで育った子。
行儀は悪くやんちゃすぎる琉晴に良多は呆れる。
病院は、このような取り違えが起こった場合、
その両親は元に戻すために交換する道を100%選ぶものだと言うが、
こんな大事なことをすぐに決められるわけはない。
しばらくは両家族で会い、慣れてきたころに慶多と琉晴がそれぞれの家でお泊まり。
そうして様子を見つつ、どうすべきかを考えるのだが……。
傲慢とも言える態度を取る良多、多大な慰謝料を当てにする雄大と、
人間の嫌な部分はぞんぶんに見せられているというのに、
不思議とどちらにもそんなに嫌悪感は持ちません。
福山雅治とリリー・フランキーという役者ゆえなのかもしれませんが、
人間ならばこんなところはあるよねと納得してしまうのです。
タイトルは「父になる」、こうした父親たちが主役であるはずなのですが、
本作の肝は母親たちなんじゃないかなと思いました。
のちにみどりが「なんて言ったか覚えてる?」と問う良多の言葉は、
女性であれば、本作を観ている人ですら即答できると思います。
取り違えに気づかなかったことで自分を責めるみどり(尾野真千子)。
慶多を誰よりも愛しながら、引き取った琉晴にも懸命に愛情を注ごうとします。
「似てるとか似てないとか、そんなことを考えるのは、
繋がっている実感のない男だけよ」、そう言い放つゆかり(真木よう子)が、
寂しさに耐える慶多をぎゅっと抱きしめるシーンや、
良多が継母ののぶ子(風吹ジュン)に電話した折りに、
謝ろうとする良多に「良ちゃんとはもっと馬鹿な話がしたい」と笑う声に泣きました。
『ポテチ』(2012)のときも石田えり演じる母親に、
「血のつながりなんてなんのその」の母ちゃん像を感じて泣きましたが、
本作も、父ちゃんよりも母ちゃんにグッと来た作品です。
出産を経て、血のつながりをより強く感じるのは母親のはずなのに、
面白いというのか凄いなぁと思います。
義母も私も大満足、『奇跡のリンゴ』のさいは岩木富士を臨むパンフレットを贈りましたが、
今回はほしいかなどうかなと思って尋ねたら、「ほしい」。
「友だちに自慢したいわ。お嫁さんと観に行ったって」。お母さん、どうもありがとう。
そうそう、本作での手土産は虎屋の羊羹。
『謝罪の王様』では桐箱入り、通訳曰く14,000円相当の羊羹が登場しましたが、
2作つづけてまさか虎屋が出てくるとは予想外、笑ったぞ。
『映画秘宝』の11月号のインタビュー記事で、
リリー・フランキーが「絶対先に『そして父になる』を観てほしいんです。
『凶悪』を観てから『そして父になる』を観ると、俺が演じた電器屋のお父ちゃん、
絶対ウラで人殺ししてるだろうって思われるから」と笑っていますが、
すまん、リリーさん。先に『凶悪』を観てしもた。(^^;
監督:是枝裕和
出演:福山雅治,尾野真千子,真木よう子,リリー・フランキー,
二宮慶多,横升火玄,風吹ジュン,國村隼,樹木希林,夏八木勲他
とうぶん出張はないはずだったダンナが9月末に急にタイへ。
いつ帰国できるかまったく不明なため、飲み会などの予定を入れることもできず、
しかし今日明日帰国しないとわかっているならば、
映画ぐらいは観に行っても大丈夫かしらんと、夜な夜な映画を観ること2週間。
ダンナが急に出張になった日にダンナ実家に寄ったら、
義母は「そんなに急に出張になったの。あんた、そら寂しいやろねぇ」。
それを聞いた義父が「なんでや。息抜いたらええがな。羽伸ばせや」。
はい、思いっきり羽を伸ばしてま~す。(^O^)
あと数日でホントに帰国するようなので、映画三昧もじき終了。
てなわけで、この2週間に書きためたものを間を置かずにUPします。
これは『謝罪の王様』の翌日、109シネマズ箕面にて。
『奇跡のリンゴ』を観に行ったさい、義母が「あれも観たいわ」と言っていたのが本作。
カンヌ国際映画祭で話題になったから興味を持ったのでしょうけれども、
是枝裕和監督のこれまでの作品は決して万人受けするとは思えません。
それに、カンヌの受賞作と言えば『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)のように、
普段あまり映画を観ない人が観に行ったら呆然としたなんて例もありますから、
義母にはそういう話もしつつ、それでも観たいですかと尋ねました。
前回、シネコンに驚き、劇場で観るのがやみつきになりそうだと喜んでいた義母は、
「それでも観たい」とのこと。ほなら行きましょかということで。
60年前に映画を観たきりの義父も誘いましたが、ニコニコしながら「やめとくわ」。
義母とふたりでしつこく誘ったら、「あんた(=義母)と一緒に観とうないねん」。
お父さん、それ、暴言ですやん。ま、快く送り出してくれました。
大手ゼネコンに勤務するエリート社員の野々宮良多とその妻みどり。
仕事仕事で妻子と過ごす時間は少ないが、自宅はまるでホテルのような高層マンション。
何不自由ない毎日を送り、6歳になる息子の慶多のお受験戦争もクリア。
慶多のおっとりした性格が気になるものの、半年後の小学校入学を待つばかり。
ある日、慶多を出産したみどりの地元の病院から連絡が入る。
病院を訪ねると、慶多は同日に生まれた他人の子どもだと告げられる。
赤ん坊の取り違えなんて今どき信じられない、
田舎の病院で出産するからだとみどりにも怒りを向ける良多。
慶多の本当の親は、小さな電器店を営む斎木雄大とその妻ゆかり。
良多夫婦の実の息子は、雄大夫婦の長男として育った琉晴。
弟と妹もいる琉晴は活発で面倒見のいい兄らしいが、
お世辞にも品がいいとは言えない、がさつな雄大夫婦のもとで育った子。
行儀は悪くやんちゃすぎる琉晴に良多は呆れる。
病院は、このような取り違えが起こった場合、
その両親は元に戻すために交換する道を100%選ぶものだと言うが、
こんな大事なことをすぐに決められるわけはない。
しばらくは両家族で会い、慣れてきたころに慶多と琉晴がそれぞれの家でお泊まり。
そうして様子を見つつ、どうすべきかを考えるのだが……。
傲慢とも言える態度を取る良多、多大な慰謝料を当てにする雄大と、
人間の嫌な部分はぞんぶんに見せられているというのに、
不思議とどちらにもそんなに嫌悪感は持ちません。
福山雅治とリリー・フランキーという役者ゆえなのかもしれませんが、
人間ならばこんなところはあるよねと納得してしまうのです。
タイトルは「父になる」、こうした父親たちが主役であるはずなのですが、
本作の肝は母親たちなんじゃないかなと思いました。
のちにみどりが「なんて言ったか覚えてる?」と問う良多の言葉は、
女性であれば、本作を観ている人ですら即答できると思います。
取り違えに気づかなかったことで自分を責めるみどり(尾野真千子)。
慶多を誰よりも愛しながら、引き取った琉晴にも懸命に愛情を注ごうとします。
「似てるとか似てないとか、そんなことを考えるのは、
繋がっている実感のない男だけよ」、そう言い放つゆかり(真木よう子)が、
寂しさに耐える慶多をぎゅっと抱きしめるシーンや、
良多が継母ののぶ子(風吹ジュン)に電話した折りに、
謝ろうとする良多に「良ちゃんとはもっと馬鹿な話がしたい」と笑う声に泣きました。
『ポテチ』(2012)のときも石田えり演じる母親に、
「血のつながりなんてなんのその」の母ちゃん像を感じて泣きましたが、
本作も、父ちゃんよりも母ちゃんにグッと来た作品です。
出産を経て、血のつながりをより強く感じるのは母親のはずなのに、
面白いというのか凄いなぁと思います。
義母も私も大満足、『奇跡のリンゴ』のさいは岩木富士を臨むパンフレットを贈りましたが、
今回はほしいかなどうかなと思って尋ねたら、「ほしい」。
「友だちに自慢したいわ。お嫁さんと観に行ったって」。お母さん、どうもありがとう。
そうそう、本作での手土産は虎屋の羊羹。
『謝罪の王様』では桐箱入り、通訳曰く14,000円相当の羊羹が登場しましたが、
2作つづけてまさか虎屋が出てくるとは予想外、笑ったぞ。
『映画秘宝』の11月号のインタビュー記事で、
リリー・フランキーが「絶対先に『そして父になる』を観てほしいんです。
『凶悪』を観てから『そして父になる』を観ると、俺が演じた電器屋のお父ちゃん、
絶対ウラで人殺ししてるだろうって思われるから」と笑っていますが、
すまん、リリーさん。先に『凶悪』を観てしもた。(^^;