夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『スーサイド・ショップ』

2013年10月01日 | 映画(さ行)
『スーサイド・ショップ』(原題:Le Magasin des Suicides)
監督:パトリス・ルコント
声の出演:ベルナール・アラヌ,イザベル・スパッド,ケイシー・モッテ・クライン,
     イザベル・ジアニ,ロラン・ジャンドロン他

前述の『凶悪』を観終えてから、ちょっとお茶でもと思い、
シアトルズベストコーヒー阪急三番街店へ。
これまた購入したまま数年放置していた池井戸潤の『シャイロックの子供たち』を
『半沢直樹』の最終回前に読んでおこうという気になり、
コーヒーを飲みながらゆっくり読書するはずが、タバコの煙もうもう。
私は別に嫌煙家ではないし、むしろタバコを格好良く吸う人には見惚れてしまうのですが、
髪の毛にも服にもにおいが移りそうなほど煙が立ちこめていると、さすがにゲッ。

で、コーヒーを飲んだらとっととシアトルズベストを退出。
テアトル梅田のロビーで読書にふけることに。

そうしたら、耳に飛び込んでくる劇場スタッフと客の会話がおもしろい。
電話で劇場の場所やチケット方法を問い合わせてきた客がいるようで、
どれだけ説明しようともわからない客に、スタッフのお姉さん、キレ気味。
「ですからね、お客様」。
心のうちは「だから今から来たってもう空席がないかもしれんっゆうとるやろが。
人の話を聴かんか、ごらっ!」ってな感じではなかったかと。(^O^;

その後やってきたおばさま二人連れも、シニア料金にはなるのかとか、
何日後のチケットまで買えるのかとか口々にまくしたて、お姉さん、ぶちキレ。
よろよろとやってきたおじさまも、別のスタッフのお兄さんに、
ここまでたどりつくのがいかに大変だったかを語っています。
お兄さんはわりと上手くかわしていらっしゃいましたけれども。

てな本題とまるでちがう話はさておき、本作も『凶悪』と同日に封切り。
65歳になるフランスの名匠パトリス・ルコント監督の初のアニメーション作品です。
映画監督になる前はイラストレーターとして活躍されていたそうな。

不景気ゆえか世の中はひたすら暗く、自殺志願者がいっぱい。
しかし、公共の場で自殺を図ると厳しく罰せられる。
無事に死ねたときにはかまわないが、運悪く死にきれなかったとき、
多大な罰金が科せられて大変なことになる。

そこで人気なのが“Le Magasin des Suicides”、すなわち自殺用品の専門店。
表通りから少し入った場所にたたずむその店を経営するのはトゥヴァシュ一家。
公共の場で飛び降りたり車にはねられたりしなくても確実に死ねるよう、
値段もピンからキリまで、各種の自殺用品を取りそろえている。

父親のミシマ、母親のルクレス、長女のマリリン、長男ヴァンサン。
いずれも超ネガティブで、笑顔を見せることはまったくない。
そんな一家に家族がひとり増える。生まれたのは次男のアラン。

ところが誰に似たのかこのアラン、よく笑う活発な男の子に育つ。
ポジティブな彼には同様の友だちが集まり、なんとかできないものかと企む。
自殺用品に勝手に手を加えて自殺できなくしてしまうものだから、
店は経営に危機に陥ってミシマは激怒、ルクレスも大弱り。

しかし、アランの明るさと優しさに徐々に周囲が影響を受けて……。

なんと大胆な話なのでしょう。
原作はベストセラー小説とはいえ、なかなか手は出しづらいかと。
それに手を出し、小粋なアニメにしてしまった監督、天晴れです。

自殺に所以のある著名人の名前を登場人物に付けられています。
ミシマはもちろん三島由紀夫、マリリンはマリリン・モンロー、これはすぐわかりますね。
ルクレスはローマ教皇の娘で毒薬に関係するルクレツィア・ボルジア、
ヴァンサンはやはり自殺を疑われている画家フィンセント・ヴァン・ゴッホ、
アランはイギリスの数学者で青酸中毒で死亡したアラン・チューリングですと。

ラスト直前の一件はブラックすぎて不要だったかなという気はしなくもないですが、
『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』がどうにも合わなくて、
アニメはしばらく観る気にならないかもと思っていたところへ、こんなアニメ。嬉しいがな。

笑顔と音楽と美味しい食べ物が生きる力をもたらす。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする