夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

2018年2月に読んだ本まとめ

2018年03月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2018年2月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:4337ページ
ナイス数:965ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly

■夜の木の下で (新潮文庫)
ここに登場する人たちは、おとなになって、こどもの頃の自分を思い返しているけれど、甘酸っぱいなんてものじゃない。どこかにトゲが刺さっているみたい。弟とか友達とか、ずっと一緒にいた人が目の前から消えてしまいそう。湿度高め、妙に生々しい描写もあって、『夏の庭』が大好きだった私は戸惑い気味。生理用品を焼却炉で燃やす話には苦笑い。「生理はうつる」と信じていた頃が懐かしい。女子生徒がみんな同じ日にばかり生理になるはずなんてないのに、なぜかかぶるんだなぁ(笑)。もうちょい明るめの湯本さんのほうが好きかもしれません。
読了日:02月01日 著者:湯本 香樹実
https://bookmeter.com/books/12365149

■浪花の太公望 (集英社文庫)
ネットの掲載記事を読めば、あきらかに変人であろう著者。本人写真はなんだか売れない芸人みたいだし(失敬)。だけど、時代ものはまだまだ苦手な私がハマっている時代小説、鍋奉行犯科帳シリーズです。好きすぎて、制覇するのは寂しく、大事に大事に読んでやっとシリーズ3冊目。食べ物に異常な執着を見せるお奉行様。主役は町奉行所の若い同心。食いもんにしか興味がないと見せて、ここぞというときにお奉行様登場。毎度思うことですが、時代小説かつグルメ小説でありながら、コメディでミステリーで人情もの。なんでこんなに楽しいの。好きやっ!
読了日:02月03日 著者:田中 啓文
https://bookmeter.com/books/8066164

■愚者の毒 (祥伝社文庫)
読むのに体力が要ると聞いていましたが、重量級。職安の初歩的ミスで知り合った2人の女性。これまで人づきあいを避けてきた彼女たちが無二の親友に。不穏な空気を漂わせながらも第1章はまだ平和。第2章以降は本当にキツイ。登場人物の名前のせいなのか、なぜか読んでいるあいだじゅう、山崎ハコの『織江の唄』が頭の中を流れていました。内容はまるで違うのに、どん底感が一緒。誰が誰なのかは予想がついたからその点に驚きはないけれど、綿々と続く過去の描写が辛すぎて、なのに読まずにいられません。生きることは苦しい。それでも生きてゆく。
読了日:02月06日 著者:宇佐美 まこと
https://bookmeter.com/books/11235091

■プリティが多すぎる (文春文庫 お 58-2)
書店勤務経験のある著者お得意の出版社もの。『校閲ガール』の主人公・悦子と比較して読むのも一興。本作の主人公・佳孝は学生時代から根回ししてきた甲斐あって大手出版社に就職。数年経っていよいよ文芸部へ異動かとワクワクしていたのに、辞令はローティーン雑誌の編集部へ。社内外でそのことを恥じていた彼が胸を張るようになるまで。ミステリー要素はなく、純然たるお仕事小説。だけど、解説にあるように、ローティーン雑誌の仕事そのものがミステリーなのかも。読者の目線で考えなければ売れる雑誌はつくれない。関わる人は皆真剣、一所懸命。
読了日:02月09日 著者:大崎 梢
https://bookmeter.com/books/8276352

■丸太町ルヴォワール (講談社文庫)
初恋を語るのは、頭よすぎ顔きれいすぎな御曹司、その名も「論語」。論語は祖父殺害の犯人として、京都で開かれる私的裁判「双龍会」にかけられる。私も含めて京都贔屓の人にはたぶんとても楽しい。ちゃんとミステリーなところも○。アニメにしたら映えそうな、オタクな雰囲気。名前を「ごんべんくさい」と評すところからして私は大好きだけど、好き嫌いが激しく分かれそう。本作の登場人物たちと、西尾維新の戯言使いと、森見登美彦のオッパイ大好き少年と、言の葉対決をしたらさぞかし盛り上がるのでは。折れず曲がらずの丸太町通。初恋は切ない。
読了日:02月13日 著者:円居 挽
https://bookmeter.com/books/5351753

■春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)
古典部シリーズを読んだ折に、もうちょい重い単体もののほうが好みだと思い、小市民シリーズはスルー。読んでみたら、なんすかこの、爽やかとは言いがたい青春の楽しさは。高校入学と同時に小市民を決め込むことにした小鳩くんと小佐内さん。なのに、彼らを襲う日常の謎。ちっこくて、控えめで、たまに察してちゃんで、ときに背後霊のような小佐内さん。しかしその実……なキャラにもう首ったけ。彼女の過去とこれからを知らずには読むのをやめられない。正義感あふれる堂島くんも外せません。2個買ったタルトって、ピースやと思ったらホールかい!
読了日:02月15日 著者:米澤 穂信
https://bookmeter.com/books/580070

■神坐す山の物語 (双葉文庫)
奥多摩の御嶽山にまつわるちょっとした怪異譚。代々神官を務める家で起きた不思議なこと。良いということはわかっていても眠気を誘われてしまう本があります。敬愛する浅田さんの作品にもいくつかそんな作品があり、これも私にとってはそう。子どもたちを寝かしつけるために語られる話などは、眠くなったら寝たらええという伯母さんの言葉に、私が寝そうに。特にお酒を飲みながら読むと、心地良すぎる話に睡魔が。飲んだら読むな、読むなら飲むな(笑)。とはいうものの、この一行にやられて目が覚めるというところがあるんですよねぇ、浅田さん。
読了日:02月16日 著者:浅田 次郎
https://bookmeter.com/books/12486754

■JUNK 毒にもなれない裏通りの小悪党 (双葉文庫)
この人は、もっと売れて然るべき作家だと思います。第1章の『指』は、安定した生活を送っているのに、掏摸(スリ)の天賦の才を持つ男が掏摸集団にスカウトされる。第2章の『飯』は、彼女との格差に悩む男が刑務所前の定食屋で破格の報酬を提示されて働くことに。文庫版に収録の第3章は正直に言って蛇足かなという気もしなくはないですが、第2章までは参りました。自分のことを好きになれなかった男たちが、少しずつ熱い感情を持ちはじめるくだりに脱帽。同著者の『太陽がイッパイいっぱい』には敵いませんが、著作どれも今のところハズレなし。
読了日:02月19日 著者:三羽 省吾
https://bookmeter.com/books/8248163

■銀河に口笛 (角川文庫)
昭和40~50年代に小学生だった著者と同世代の人でなければツライかも。どんぴしゃの世代なら、オレンジ色の空と歩道橋、この表紙だけで郷愁に浸れそう。あのとき「ボク」たちが流れ星を追いかけた先にたたずんでいた「キミ」。35年前を回想しながら、もう会えないキミにボクが語りかける形。キミはきっと宇宙人。ウルトラマンに仮面ライダー、(たぶん)カンロ飴と、その頃を懐かしむ要素がいっぱい。だけど、ノスタルジックな小説の名手にしては期待値より上とは言えなくて、阪本順治監督の『団地』(2015)を観たときのような気分です。
読了日:02月21日 著者:朱川 湊人
https://bookmeter.com/books/6966388

■エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ (講談社文庫)
今週、西宮大谷記念美術館で開催中の藤田嗣治展に行き、読むなら今しかないでしょということで。画廊のオーナーが密室で刺殺される。450頁超のうち、要らんやろと思う部分多数。能書き薀蓄垂れて勿体つけすぎ。特に悪態つくのが仕事と公言してはばからない警部には怖気が走ります(^^;。画家の名前が出るたびに口走るボケはまったく笑えず、しばいたろかと思うほど。とはいえ、エコール・ド・パリについてわかりやすく書かれているのはありがたい。「日本人全体がエコール・ド・パリになるべき」、すなわち一人一派となるべきだと。一理あり。
読了日:02月23日 著者:深水 黎一郎
https://bookmeter.com/books/3073473

■優しい死神の飼い方 (光文社文庫)
ローブを纏った骸骨が鎌を持ち歩くのが死神のイメージ。なのにこの死神はなんとも愛らしい。地縛霊化率を押し下げるため、犬の姿を借りて地上に「左遷」された死神レオは、ホスピスにペットとして居着く。明日死んでもいいように毎日を生きるのが私の信条ですが、それでも、想定していたよりずっと早く余命を告げられたら、いっさいの未練なく死ねるのか。温かい人間ドラマのなかにミステリーが満ち、サスペンスフルなシーンも。個人的にはもう少し歳を食った作家が書きそうな重みズドンと来る作品のほうが好みですが、評判の良さにはめっちゃ納得。
読了日:02月26日 著者:知念 実希人
https://bookmeter.com/books/10989701

■長女たち (新潮文庫)
ひとりっ子でしょとか、末っ子でしょとか、(きょうだいの)上でしょとか、内心思い思われているのはよくあること。しかしそれっぽくない人ならばそうは思われないわけで、きょうだいの数が性格の形成にいかほど関わるのかは専門家に任せるとして。本作に登場する長女は3人。連作ではなく独立した話。姉妹の姉、兄妹の妹、姉弟の姉と、さまざま。長女ゆえに親の世話をすることになったり、長女ゆえの気質で仕事に臨んだり。どの主人公も多分に気負いすぎなところがあり、それがふっと抜けるシーンには心が動かされます。かくいう私も長女ですけど。
読了日:02月28日 著者:篠田 節子
https://bookmeter.com/books/12282625

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