夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『12か月の未来図』

2019年05月13日 | 映画(さ行)
『12か月の未来図』(原題:Les Grands Esprits)
監督:オリヴィエ・アヤシュ=ヴィダル
出演:ドゥニ・ポダリデス,アブドゥライ・ディヤロ,レア・ドリュッケール,ジーネ・トリキ他

GW終盤、この日も晩は飲み会で、その前に映画を2本と西宮市大谷記念美術館。
まずは映画の1本目、テアトル梅田にて本作を。
 
原題はフランス語でLes Grands Esprits”、
英語タイトルはもっとシンプルに“The Teacher”です。
実際にこういう施策がパリであり、教師や生徒への取材をもとにつくられた作品とのこと。
 
その指導ぶりは非常に厳しく、点数の悪い生徒には容赦ない。
 
フランソワの父親は有名な作家。
その出版記念行事の席に顔を出したフランソワは、居合わせた美人女性客に、
パリの名門学校と郊外の学校では生徒の学力に差がありすぎること、
その差を解消するためにはベテラン教師を郊外に派遣すべきだと話す。
女性は政府の教育機関に勤めているらしく、もっと話を聞きたいとフランソワに言う。
 
後日、ランチを一緒にどうかという誘いにフランソワはうきうき。
相手の勤務先にいそいそと駆けつけるが、なんとランチには彼女の上司も同席。
先日のフランソワの提案が画期的なので実現したい、
ついてはまずは1年間、フランソワ自身に郊外の中学校へ行ってほしいと。
 
まさかそんな話になるとは想定していなかったフランソワは固辞。
しかし気まずい空気が流れたことからなんとなく承諾してしまう。
赴任先の中学校はこれまでの高校とはあまりに環境が異なり、問題児ばかりで……。

ドゥニ・ポダリデス演じるフランソワは、最初はいけすかない奴です。
見た目も冴えないくせして、何その自信と言いたくなる。
美人相手にちょっと偉そうに自説をぶってみたのが見え見えで、
そのせいで問題中学校へ派遣されることになり、まったくイイ気味でした。
 
ベンツに乗って赴任地に向かうと、周りの様子がどんどん荒んで行く。
所得もどんどん下がって行くのが景色を見るだけでわかります。
教室の扉を開くとさまざまな人種の子どもたち。
挨拶なんてほとんど誰もしないし、授業を聴く気はこれっぽっちもなし。
 
「教師の話は聴くのが当たり前」、そう思っている先生って案外多いような気がします。
子どもたちが話を聴こうとしないのは、あなたの話がつまらないから。
聴かせる力がないのをすべて、聴かない子どものせいにする。
 
フランソワもまさにそんな人でした。
独身の彼は、姉や姪っこたちから「勉強が苦手な子もいるのよ。
おもしろい授業をしてみれば」と言われても最初は無視。
でも、どうにもこうにもならないとわかって、徐々に彼自身が変わってゆく。
 
いけすかない奴だと思っていたけれど、融通が利かないだけで悪い奴ではない。
ほかの教師たちは問題児をすぐに退学にすればいいと思っていても、
フランソワは子どもたちが1冊の本を読み切ることを目標に掲げ、
リタイアする子がひとりも出ないように方法を考えます。
彼が選んだのは『レ・ミゼラブル』。きっと読みたくなる。
 
最後はちょっと泣けますよ。

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