『私は確信する』(原題:Une Intime Conviction)
監督:アントワーヌ・ランボー
出演:マリナ・フォイス,オリヴィエ・グルメ,ローラン・リュカ,ジャン・ベンギーギ,フランソワ・フェネール,
フィリップ・ウシャン,インディア・エール,アルマンド・ブーランジェ,スティーヴ・ティアンチュー他
シネ・リーブル梅田で3本ハシゴの3本目。
2000年にフランスで起きた未解決事件を基にした作品。
事件自体は実際にあったことですが、
本作の登場人物の人柄等についてはフィクションだと最後にテロップで示されていました。
アントワーヌ・ランボー監督にとってはこれが長編デビュー作。
フランス南西部のトゥールーズに暮らすヴィギエ家は、
夫ジャックとその妻スザンヌ、息子2人と娘1人の5人家族。
ある日、スザンヌが忽然と姿を消し、
数週間後にジャックが妻殺害の容疑で逮捕される。
しかし、妻の遺体は発見されず、殺されたのかどうかすらわからない。
確たる証拠なく、第一審では無罪となるが、検察が控訴。
まもなく第二審が始まろうとしている。
シングルマザーのノラは、自分の息子の家庭教師がヴィギエ家の娘クレマンスだったことから、
ジャックの無罪を信じ、なんとか力になりたいと考える。
そこで、自ら調べ上げた記録を手に、敏腕弁護士のデュポン=モレッティに会いに行く。
多忙なデュポン=モレッティはノラの依頼を即座にはねのけるが、
ノラから強引に渡された記録を見て考えを変える。
ジャックの弁護を引き受けることにしたデュポン=モレッティは、
250時間にも及ぶ関係者の通話が録音されたテープをノラに委ね、
すべて聴いておかしなところがあれば教えてほしいと言い……。
法廷劇ではあるのですが、法廷ばかりが舞台じゃない。
こんな長時間の通話記録をひたすら聴くなんて。
ノラはレストランのシェフを務めているし、息子もまだまだ母親べったりの年頃。
仕事と育児の合間を縫ってテープを聴くことに没頭するノラですが、
次第にそれが最優先になり、仕事は手につかず、息子のこともほったらかしに。
裁判以外のこの辺りも見過ごせないシーンです。
それにしてもこの事件の捜査は杜撰すぎる。
何の証拠もないのに夫が犯人と決めつけ、
その決めつけのもとになっているのがスザンヌの愛人オリヴィエの話。
実物がどんなだか知らないけれど、ジャックとオリヴィエをふたり並べたら、
どう見てもジャックのほうが善人でオリヴィエは悪人でしょう(笑)。
それ以前に、不倫関係は密かにおこなわれるものでしょうに、
こんなふうに愛人が大きな態度で夫を貶める様子にお国柄の違いを思いました。
仕事さえできれば別に愛人がいたってかまわない国だというのは本当なのですね。
デュポン=モレッティ役には名優オリヴィエ・グルメ。
ノラ役のマリナ・フォイスとの掛け合いは緊張感があって面白い。
結局、愛人が怪しいという話にはなったけれど、事件はいまだに解決されぬまま。
スザンヌはいったいどこへ消えたのでしょうか。
冤罪はどこの国にもある。冤罪を生む過程が怖い。