『天国にちがいない』(原題:It Must Be Heaven)
監督:エリア・スレイマン
出演:エリア・スレイマン,ガエル・ガルシア・ベルナル,タリク・コプティ,
アリ・スリマン,ヴァンサン・マラヴァル,ナンシー・グラント他
2月23日ってなんの祝日なのでしたっけと、まだ慣れない天皇誕生日。
シネ・リーブル梅田にて3本ハシゴの1本目。
フランス/カタール/ドイツ/カナダ/トルコ/パレスチナ作品。
お腹は中年らしくちょっと出ているけれど、端正な顔立ちでとてもお洒落。
そんなご本人が主演を務める本作は、なんとも言えずシュール。
イスラエルのナザレに暮らす映画監督エリア・スレイマンは、
新作映画の企画を売り込もうと世界各地を訪れます。
特にパリとニューヨークで遭遇した日常の風景にびっくり。
……という感じなのですけど、スレイマンが発する台詞はほとんどありません。
内心ドキドキ、唖然呆然としている様子が少し表情に表れるくらい。
ホテルの窓の下では若者と警官が追いかけっこ。
ひとりで歩いていると、棍棒のようなものを持った集団と出会う。
地下鉄で会ったやたらいかつい兄ちゃんに凄まれる。
噴水のまわりで繰り広げられるまるで椅子取りゲームのような光景。
タクシーに乗って、パレスチナ人だと言っただけで珍しがられ、
料金をタダにしてもらったり。
わが家に帰れば、隣人が勝手に庭に入り込んで(ノックはしたと言う)、
レモンをもいでいるし、でも剪定や水やりもきちんとしてくれている。
気さくに声をかけられても、なんと返事してよいのやらわからないスレイマン。
自国では過激な椅子取りゲームのような争いが起きているのに、
他国では追われていても追いかけていてもどこか平和。
隣人が自分の敷地にいとも簡単に入ってきて、
だけど争いなど起こらず、庭の手入れをしてくれる。
パレスチナで起きていることはこれと似たようなことなのに、
どうしてこうも違うのかと思っているのかもしれません。
スレイマン監督が願う平和が訪れますように。