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『哀れなるものたち』

2024年02月04日 | 映画(あ行)
『哀れなるものたち』(原題:Poor Things)
監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:エマ・ストーン,マーク・ラファロ,ウィレム・デフォー,ラミー・ユセフ,ジェロッド・カーマイケル,
   クリストファー・アボット,キャスリン・ハンター,ハンナ・シグラ,ヴィッキー・ペッパーダイン他
 
109シネマズ箕面にて。
 
スコットランドの作家アラスター・グレイの同名ゴシック小説をギリシャ出身のヨルゴス・ランティモス監督が映画化。
この監督の日本で初めて公開された作品『籠の中の乙女』(2009)を観たときの衝撃はいまだに忘れられません。
鬼才か奇才かと言うけれど、やっぱり変態だと思います。好きですけどね(笑)。
 
ある日、医学生のマックス・マッキャンドルズは、心酔する天才外科医ゴドウィン・バクスターに呼ばれる。
ゴドウィンの邸宅について行くと、そこには世にも美しき痴人がいた。
 
その痴人の名はベラ。
ゴドウィンはベラの行動の一部始終を書きとめて記録するようにマックスに言う。
大人の女性の容姿でありながら、まるで幼児のごとき振る舞いのベラに驚きつつ、
彼女の魅力に取り憑かれたマックスは、ベラの事情を知りたいと思い、ゴドウィンに詰め寄る。
 
するとゴドウィンが語ったのは信じがたい話。
橋の上から女性が身投げする瞬間を目撃したゴドウィンが駆け寄ると、
女性はすでに息絶えていたが、彼女は妊婦だった。
ゴドウィンは腹の中の胎児を取り出すと、胎児の脳を遺体の脳に移植し、女性を生き返らせる。
肉体は女性、脳は赤ん坊のベラを育てる実験をしているゴドウィン。
マックスはその成長過程を記録する役目を与えられたのだ。
 
目覚ましい成長を見せるベラは、自我の芽生えと共に、外の世界に興味を持ちはじめる。
彼女を外に出したくないゴドウィンは、ベラとマックスを結婚させて邸宅に閉じ込めようとするが、
婚姻の書類を作成しに訪れた放蕩弁護士ダンカン・ウェダーバーンは、ベラを連れて行こうとする。
 
ダンカンとの駆け落ち計画をもゴドウィンに素直に報告するベラは、
いずれ戻ってマックスと結婚するから、しばらく冒険の旅に出たいと告げる。
ゴドウィンとマックスはそれを了承してベラを送り出すのだが……。
 
グロさの点では『サンクスギビング』の上を行く。しかしとても面白い。
この監督のことですから、ひょえ~というオチか、なんじゃいこれというオチを予想していたのに、
なんだかんだでこれはハッピーエンドじゃあないですか。
 
見た目は女性だけれど頭の中は赤ん坊だったベラが成長して行くと、
食べるものへの興味と性への興味がいちばんに出てきます。
性行為を「熱烈ジャンプ」と評する彼女が可笑しい。字幕翻訳松浦美奈さん。最高です。
 
プレイボーイを自認し、ベラとちょっと遊ぶつもりだったのに骨抜きにされるダンカン。
豪華客船に乗ってベラと外界との関わりを断とうとするも失敗し、困り果てます。
船上で知り合った老女に知識欲を刺激され、どんどん賢くなっていくベラ。
ダンカンはベラを思い通りにできずに荒れて泣き崩れるだけですが、
ベラのほうはパリの娼館にたどり着くとそこでたくましく生きるすべを覚えます。
 
凄い脱ぎっぷりを見せてくれたエマ・ストーンの演技が素晴らしい。
ダンカン役はマーク・ラファロ“アベンジャーズ”“ハルク”のイメージが強いですが、
こんなダメダメ男もよく似合っていて上手い。
つぎはぎだらけの顔のゴドウィン役、ウィレム・デフォーは言うまでもなくさすがです。
マックス役のラミー・ユセフにも温かみがあってよかった。
 
万人には鑑賞を勧められませんが、面白くて良い映画を観たなぁと思えます。

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