夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

ちがう意味で涙目になった本

2012年01月17日 | 映画(番外編:映画と読み物)
前述の2冊(これこれ)とはちがう意味で目が潤んだ本。

その前にこんな映画のご紹介を。
日本では昨夏に公開されたオランダ/イギリスの作品で、
来月DVDがレンタル開始になる『ムカデ人間』(2009)。

若い女性ふたりがドイツを旅行中にレンタカーがパンク。
助けを求めたのが森の中の一軒家に住む外科医で、
知らぬ間に睡眠薬を飲まされて、目が覚めると地下室のベッドに拘束状態。
外科医は人間を拉致しては、それぞれの肛門と口を繋ぎ合わせて
“ムカデ人間”を作る実験をしていた……という、
書いているだけでテンションが下がりそうな作品です。

それ以前に読んでいたのが乙一の『暗黒童話』。
『暗いところで待ち合わせ』(2006)や『きみにしか聞こえない』(2007)の原作者で、
アニメ作品『ホッタラケの島 遥と魔法の鏡』(2009)の脚本も担当した乙一は、
グロな著作のイメージが私にはまったくなかったため、
『暗黒童話』を手に取ってしまったのですが、涙目。(T_T)

おもしろかったんです、凄く。
ただ、これがまるで“ムカデ人間”。
うろ覚えではありますが、これも確か森の中の一軒家。
行方不明になった人間がここに囚われていて、体の各部位を繋がれているんです。
みんな意識ははっきりしているから、口々に喋る。そして、仲よしこよし。
この異様な光景が発見されたときの描写は思い出したくもありません。

そんなわけで、『ムカデ人間』はどうしても観に行くことができず、
『暗黒童話』のことも忘れかけていたのですけれど。

つい最近、なんとなく惹かれて読んでしまったのが、綾辻行人の『フリークス』。
狂気の科学者が5人の子どもに人体改造をほどこします。
ある日、その科学者が殺されるのですが、
犯人となり得るのは子どもたちのうちの誰かしかいません。
科学者から“怪物”と呼ばれ、虐待を受けつづけてきた彼らには動機は十分。
しかし、奇形の彼らがどうすれば惨殺をおこなえたのか。

これもまたかなりグロな描写でゲンナリはしましたが、困ったことにおもしろい。
ミステリーとしても随所に仕掛けがちりばめられていて楽しめます。

TSUTAYA DISCASの近日リリース予定には『トカゲ人間』(2011)も。
ジャケットを見ると、そもそもの邦題らしい『バイオモンスター 蜥蜴男』の文字。
どうやらこれはトカゲの顔に生まれてしまった男の復讐劇で、
『ムカデ人間』のタイトルのみパクったようですけど、
どっちにしても私にはムリッ!

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最近、涙で目が潤んだ本(その2)

2012年01月13日 | 映画(番外編:映画と読み物)
もう1冊は、辻村深月の『ぼくのメジャースプーン』。

前述の『空飛ぶタイヤ』の池井戸潤が1963年生まれなのに対し、
辻村深月は1980年生まれ。
なんとなく私より5歳以上若い著者の作品は避ける傾向にありましたが、
『重力ピエロ』でハマって読みあさった伊坂幸太郎が1971年生まれ、
『片眼の猿』と『ソロモンの犬』が好きだった道尾秀介が1975年生まれ、
『インシテミル』などの米澤穂信が1978年生まれ、
それになんと言っても森見登美彦が1979年生まれということもあり、
1980年生まれの作家にも挑戦してみることに。

小学4年生の「ぼく」は、同級生の「ふみちゃん」のことが好き。
ある日、みんなで飼っていたうさぎが惨殺される。
誰よりもうさぎを可愛がっていたふみちゃんが第一発見者。
ふみちゃんはショックのあまり、心を閉ざしてしまう。

ぼくは不思議な力の持ち主。
「条件ゲーム提示能力」と呼ばれるその力は、声をかける相手に対して、
「Aという条件をクリアしなければBという結果が起こる」と提示するもの。

ぼくは犯人に復讐するため、ぼくと同じ力を持つ「先生」のところへ通い、
この力の使い方を学ぶように。犯人と対面したぼくは……。

読み始めたときの感想は、「やっぱり若すぎる著者の作風は合わないかも~」。
ふみちゃんがどうにも優等生すぎて、鼻につくことしきり。
ところが、そんなふみちゃんが口を利けなってからが切なすぎます。
ぼくが意識不明に陥ってから、一日も欠かすことなく病院まで足を運び、
ぼくのそばに座るふみちゃんの姿にウウッと思わず涙。

さて、泣いた話はこれぐらいにするとして。

この世のなかでもっとも凄絶な復讐は何かを考える場面で、
先生が復讐をテーマにした映画の話をします。
ある男に酷い目に遭わされた主人公が、
自分同様にその男を憎悪する被害者を探しだし、一堂に会して順番に復讐。
最後の人に順番が回るまで殺さないように気をつけて痛めつけるという映画。

先生はこの映画の話をぼくにしたあと、
実はそんな映画があることも自分が観たということも嘘だと言いますが、
まさに『親切なクムジャさん』(2005)がそうですよね。

『飯と乙女』(2010)のDVDに特典として収録されている短編『Rabbit for Dinner』では、
男性から食べたいものを聞かれた女性が「兎料理」と答えます。
『ぼくのメジャースプーン』でやはり先生が教えてくれる、兎と猿と狐の話も登場。

復讐に関係なく、「条件ゲーム」を考えるのもなかなか楽し。
たとえば、「いま好きだと言わなければ、その人と一生会えなくなる」とか。
ぼくからそう声をかけられた相手は、
一生会えなくなるのが嫌ならば、何が何でも好きだと言おうとします。
だけど、声をかけられた相手が無意識のうちに条件と結果を天秤にかけ、
一生会えなくなるとしても、好きだとは言いたくないと判断する場合もあるわけで。
同じ相手に使えるのは一度のみ。
そんな力を持っているとしたら、どんな相手になんと声をかけますか。

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最近、涙で目が潤んだ本(その1)

2012年01月12日 | 映画(番外編:映画と読み物)
前述の『僕たちの戦争』にも泣きましたが、
お正月休み中に読んだ本には、ほかにも泣かされたものがいろいろ。

まぁ、私の「泣きのハードル」は非常に低く、
泣いた本を挙げるとキリがありませんから、
「最近、声を上げて笑った本」ほど珍しくはないのですけれど。

まずは、池井戸潤の『空飛ぶタイヤ』。
走行中のトレーラーから外れたタイヤが親子を直撃、母親が死亡。
トレーラーの製造元であるホープ自動車会社が出した結論は、運送会社の「整備不良」。
それに納得できない赤松運送会社の社長が真相を追う……というもの。

フィクションではありますが、2002年の三菱自動車によるリコール隠しが下敷き。
誠実を信条とする中小企業の社長が、整備不良が原因ではないといくら主張しようとも、
財閥企業が悪いことをするわけはない、責任転嫁もいいところだと非難されるばかり。
その非難は社長の家族や子どもたちにも及びます。
PTAの難儀なおばちゃんの理不尽な言いようには、はらわたが煮え返る思い。

自動車会社に逆らうことで、系列の銀行から融資ストップ。
それだけにはとどまらず、これまで貸した金もすぐに返せと言われます。
得意先からも契約を打ち切られて呆然とする社長。
サラリーマンの世界、正義や信義だけではやっていけないんだよぉと思いつつ、
読書中にここまで頭に血がのぼったのは初めてかも。

やがて、自社の従業員の中にすら離れてゆく者が出てきます。
けれど、社長と運命をともにすると決めた数名、
特に、見た目はチャラ男、実は社長を心から慕う整備士には泣かされました。

終盤、刑事からかかってきた電話に感極まってまた涙。
社長と、社長を信じて残った従業員たちと一緒に、心の中でガッツポーズ。
これで一件落着とは行かず、まだその後に山場が控えているのですけれど。

2009年にはWOWOWで連続ドラマW枠として放送、DVD化されています。
3巻セットゆえに観るのを先延ばしにしてきたけれど、
原作を読んだら早く観たくてたまらなくなりました。
赤松社長に仲村トオル、ホープ自動車会社の常務に國村隼、整備士には柄本佑
そのほか大杉漣、田辺誠一、本上まなみ、袴田吉彦、相島一之、
萩原聖人水野美紀遠藤憲一、斎藤洋介、甲本雅裕などなど、
キャストを見ているだけでウキウキわくわく。

もう1冊はまた明日にでも。

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『聯合艦隊司令長官 山本五十六 太平洋戦争70年目の真実』

2012年01月10日 | 映画(ら行)
『聯合艦隊司令長官 山本五十六 太平洋戦争70年目の真実』
監督:成島出
出演:役所広司,玉木宏,柄本明,柳葉敏郎,阿部寛,吉田栄作,椎名桔平,
   坂東三津五郎,原田美枝子,中原丈雄,伊武雅刀,宮本信子,香川照之他

大日本帝国海軍の軍人、山本五十六。
彼についての著書がある半藤一利の監修のもと
(新聞記者役にその名前をもじった真藤利一という名前を当て)、
真珠湾攻撃、ミッドウェー開戦を焦点に山本の実像を描いた作品。

昭和14(1939)年の夏。好戦ムードで盛り上がる日本。
破竹の勢いで欧州を席捲するヒトラーと手を組むべきとの世論を受け、
陸軍は日独伊三国軍事同盟の締結を主張するが、海軍次官の山本は異を唱えつづける。
ドイツと結べば、アメリカとの戦争は必至。
アメリカと日本の力の差を見極めている山本は、断固として反対する。

しかし、そんな山本をはじめとする海軍を弱腰だと世間は非難。
世論と海軍の間で、三国同盟締結には至らずとも、流れは断ち切れないでいる。

そんななか、山本は連合艦隊司令長官に就任。
アメリカとの戦争は絶対に回避すべきとの願う山本だったが、
その信念を抑えて、対アメリカ戦の指揮を執ることとなる。

学生の頃、社会の授業は決して嫌いではなかったはずなのですが、
政治にも経済にも歴史にも疎いです。お恥ずかしい。
本作もさして興味があったわけではなく、時間的に合ったから観に行っただけで。

ところが、このときたまたま読んでいた本が、荻原浩の『僕たちの戦争』。
2001年、サーフィンをしに海へ出たフリーターの健太が、大波に呑み込まれて失神。
目が覚めると1944年の世界にタイムスリップしていた。
一方、1944年、霞ヶ浦予科練で飛行訓練をしていた吾一は、雨雲に巻き込まれて墜落。
目が覚めると2001年にタイムスリップしていた。
瓜二つの健太と吾一は入れ替わってしまい、家族も恋人もそうとは気づかないまま、
タイムスリップした時代をそれぞれ過ごすことに。

というお話で、『山本五十六』とかぶる、かぶる。
『山本五十六』では特攻隊のシーンで彼らの表情に泣き、
それを観てから『僕たちの戦争』の続きを読んだらまた涙。

山本五十六の実像と言っても、やはり映画。
いくぶんかは美化されているのでしょうけれど、
こんな指揮官もいたんだなぁと思わずにはいられません。

『孤高のメス』(2010)や『八日目の蝉』(2011)の成島監督。
この監督は、大衆受けするドラマを撮る能力に優れた人だなぁと思います。
役者陣はもぞもぞ喋らないし、感動的なシーンはあくまで感動的に。
音楽は効果的に。原作になくとも映像として美しい見せ場はつくる。
良くも悪くも映画は作り物であるということを生かしている印象があります。

ビックリしたのは零戦パイロット、牧野を演じた五十嵐隼士が、
『パラダイス・キス』(2011)のイザベラ役の俳優だったということ。
どこかで見たことあるなぁと思っていたけど、まさかあの女装の彼とは。(^^;

TVドラマ版『僕たちの戦争』(2006)もDVD化されています。
こちらもどうぞ。

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『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』

2012年01月06日 | 映画(ま行)
『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(原題:Mission: Impossible – Ghost Protocol)
監督:ブラッド・バード
出演:トム・クルーズ,ジェレミー・レナー,サイモン・ペッグ,ポーラ・パットン他

やはり気になる“ミッション:インポッシブル”シリーズ。
それでもいつもならDVD化されてからでいいかと思うところ、劇場まで走った理由はふたつ。
ひとつは、大好きなアニメ『レミーのおいしいレストラン』(2007)の監督だということ。
もうひとつは、前述の『宇宙人ポール』のサイモン・ペッグが出演しているということ。
日頃のサイモン・ペッグをご存じの方は、
本作の「コンピュータ係」である彼を見た瞬間にふきだしてしまうことでしょう。
しかも字幕の戸田奈津子さん、彼の台詞は若干ナヨっと気味に翻訳していて○。

CIAの 特殊チーム“IMF(=Impossible Mission Force)”のエージェント、イーサンは、
ある罪状でモスクワの刑務所に収監されていたが、IMFチームの手引きで脱獄。
コードネーム“コバルト”の情報を入手する任務に就き、
チームメイトのベンジー、ジェーンとともに、ロシアの中枢クレムリンへの侵入する。

ところが、イーサンらと同時刻にクレムリンに侵入していた別の何者かにより、
クレムリンが爆破されてしまう。
負傷して病院へ運び込まれたイーサンは、爆破事件の犯人と決めつけられ、
なんとか逃げだしたものの、ロシアの諜報員から追われるはめに。

そして、イーサンは“ゴースト・プロトコル(=IMFを解体するという指令)”が発令されたことを知る。
つまり、この爆破事件に関与していると思われてはたまらない米国政府が、
今後IMFがどういう行動を取ろうと一切関知しないと表明、
イーサンらが捕まろうが死のうが知らないと、切り捨てたということ。

やがて、“コバルト”の正体はカート・ヘンドリクスという核兵器戦略家だと判明。
彼は、人類の進化のためには核による浄化が必要であると信じ、
核兵器発射制御装置を盗むためにクレムリンに侵入、
その盗難自体を隠蔽するためにクレムリンを爆破したのだった。

装置を機動するには、コードが記された極秘ファイルを入手しなければならない。
カートの手にそれが渡るのを阻止するため、
IMFから見捨てられたことを承知のうえでイーサンらは動きだすのだが……。

トム・クルーズ、どうよ。50歳を前にして、体を張ったこの演技。
『ナイト&デイ』(2010)のときもシビレましたが、
今回はドバイのブルジュ・ハリーファ・ビルの130階、
地上約830mの外壁をスタントマンなしでみずからよじ登ったというド根性。
『トロピック・サンダー 史上最低の作戦』(2008)みたいなのもたまにはいいけれど、
この人にはやっぱりこういう格好いい役を演じつづけてほしいなぁ。

なお、カート役のミカエル・ニクヴィストは“ミレニアム”シリーズの主演男優で、
『歓びを歌にのせて』(2004)の主人公でもあります。
イーサンのチームに途中で合流するウィリアム役のジェレミー・レナーは、
悪役の多い人でしたが、今回はこんな役で一気に好印象に。
役柄が変われば、俳優の性格まで良く思えたり悪く思えたり。大変です。

シリーズの前作までの内容なんてほぼ忘れていましたが、
ワケがわからなくても楽しい点がスバラシイ。
ラストの優しい目と目の会話は、これまたワケを忘れていてもウルリ。
アニメの監督がアクション大作を撮れるのかと疑ってごめんなさい。
おみそれしました。

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