夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『素敵なダイナマイトスキャンダル』

2018年03月25日 | 映画(さ行)
『素敵なダイナマイトスキャンダル』
監督:冨永昌敬
出演:柄本佑,前田敦子,三浦透子,峯田和伸,松重豊,村上淳,尾野真千子,
   中島歩,落合モトキ,木嶋のりこ,瑞乃サリー,菊地成孔,嶋田久作他

前述の『ナチュラルウーマン』の30分後、同じくテアトル梅田にて。

1970年代後半から80年代にかけて、『ウイークエンド・スーパー』、『写真時代』等、
伝説のエロ雑誌を創刊して編集長を務めた末井昭氏の自伝エッセイが基。
現在は編集者および作家、そしてサックス奏者としても活躍されている方です。
人生すべてがネタとしか思えないほど凄絶。
キャッチコピーは、「数奇な運命を背負った雑誌編集長の《笑いと狂乱》の青春グラフィティ」。

末井昭(柄本佑)は小学校1年生のときに母親の富子(尾野真千子)が自殺。
しかも、森の中で浮気相手と一緒にダイナマイトを用いて心中した。

昭は高校を卒業すると、「工場」に憧れて大阪で就職するが、
軍隊並みに厳しい工場に失望してまた父親の重吉(村上淳)のもとへ。
しかし酒を飲むとすぐべろべろになる重吉のことが面倒くさくて家を出る。

下宿暮らしを始めたところ、初めての恋人ができる。
彼女は牧子(前田敦子)。アパートを借りて同棲開始。
デザイン専門学校のグラフィックデザイン科にかよった後、デザイン会社に就職する。

自分のデザインを上司に理解してもらえず悶々としていたが、
先輩の近松(峯田和伸)のひと言に救われる。
そんな近松に触発され、昭はキャバレーの看板描きに。
その後、職を転々とするうち、エロ雑誌の世界に足を踏み入れるのだが……。

下ネタ満載なので、当然のことながらR15+指定。
同じくR15+指定の『シェイプ・オブ・ウォーター』なんぞと比べると、
こっちはハダカのねえちゃんがこれでもかというほど出てくるので、
童貞男子とかなら十分すぎるほど興奮できるでしょう(笑)。

そんな年齢層の客は私が観た回にはいなくて、
そこそこ以上の年齢の客ばかり。
こんなものでは興奮しないどころか爆笑しきりで、場内全体いい感じ。

昭は決していい奴とは言えない。
こらえ性もないから、長続きしなかったこといろいろ。
気のよい嫁さんがいながら、浮気し放題。
飽きたら愛人もすぐにポイ、愛人はおかしくなっちゃうし。

それでも男性心理を突いたエロを追求し、
こんな雑誌を世に送り出したのはなんだかんだで凄いと思う。
荒木経惟とのコンビが有名で、その撮影シーンの再現にも興味津々。
同業者たちの真剣な対策会議も笑えれば、
松重豊演じる警察官、嶋田久作演じるダッチワイフ製作者とのやりとりも可笑しい。

エロだって芸術だ。

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『ナチュラルウーマン』

2018年03月24日 | 映画(な行)
『ナチュラルウーマン』(原題:Una Mujer Fantastica)
監督:セバスティアン・レリオ
出演:ダニエラ・ベガ,フランシスコ・レジェス,ルイス・ニェッコ他

前述の『リメンバー・ミー』とハシゴ。
無理のないハシゴを心がけた結果、間がやけに空いてしまい、
お腹もすいたことだしと阪急百貨店地階へ。
軽く食事のはずがひとりで昼酒まで。
これでは体に優しいハシゴなのかどうかわかりません。(^^;
若干酔っぱらってテアトル梅田へ。

先日発表された第90回アカデミー賞外国語映画賞を受賞したチリ作品。

トランスジェンダーのマリーナは、ウェイトレスとナイトクラブの歌手を掛け持ち。
初老の恋人オルランドと同棲し、幸せな日々を送っていたが、
ある晩、オルランドが突然体調不良を訴え、
マリーナが病院に運ぶもそのまま亡くなってしまう。

医師からは身内なのかと尋ねられ、恋人だと答えるが、奇異な顔を向けられる。
現れた女刑事は、いかに自分が「この手の人たち」に詳しいかを語る。
死亡直前に諍いはなかったか、暴力を振るわれて逆に殺したのではと疑われる始末。

オルランドの弟ガボに連絡を取ると、親族にはガボから知らせるとのこと。
やがてオルランドの妻から電話があり、車を返してほしいと言われる。
息子も押しかけてきて、早く家を出て行けと怒鳴られ……。

マリーナ役は自身もトランスジェンダーの歌手ダニエラ・ベガ。
『アバウト・レイ 16歳の決断』を観たとき、
トランスジェンダーの役をトランスジェンダーではないエル・ファニングが演じていることが非難されているのを知り、
別にそうじゃない人が演じたってええやんと思ったのですが、
本作を見ると、その非難も的を射ているのかもしれないと思い直しました。

男の身体に生まれついたけれど自分は女だ。
でも、味方となってくれる人はごくわずか。
街を歩けばオカマと嘲笑われ罵られ、手を差し伸べてくれる人はいない。
ガボだけが唯一理解を示してくれるけれども、
そんなガボからも親族の前に姿を見せないように諭されるだけ。
彼らの態度は本当にひどい。
だけど、自分の夫が、父親が、自分は女だという男性と一緒に暮らすために家を出て、
その相手に看取られて亡くなったのだと知ったら、どう気持ちの整理をつけるのか。

性別適合手術を受けても、声は変えられないのですよね。
声帯の手術も可能なようですが、ずいぶん過酷らしい。
いくら心が女性で見た目も女性になっても、
発せられるのが男の話し声だったら、私もやっぱり驚いてしまうかもしれません。
自分に偏見はないつもりでも、好奇の目を向けられたと思わせてしまうかも。

あるがままの自分を見せて、あるがままを受け入れてもらうこと。
まだまだ偏見は多すぎて生きづらい。
マリーナの歌声が切なく響きます。
最初と最後にかかるアラン・パーソンズ・プロジェクトの“Time”が凄くよかった。

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『リメンバー・ミー』

2018年03月23日 | 映画(ら行)
『リメンバー・ミー』(原題:Coco)
監督:リー・アンクリッチ
声の出演:アンソニー・ゴンサレス,ガエル・ガルシア・ベルナル,ベンジャミン・ブラット,
     アラナ・ユーバック,レニー・ヴィクター,ハイメ・カミル他

予告編のみならず、ずいぶん前から劇場でかかっていた本作のテーマ曲。
日本語バージョンの歌詞を覚えてしまうほど耳にしたけれど、
アニメといえども洋画は字幕で観たいです。
その願い叶って、TOHOシネマズ梅田の小さめシアター6、字幕版にありつきました。
上映開始数分経つまで、スーツ姿の男女がズラリ後方に並んでいて物々しい雰囲気。
話題作の封切り日にたまに見る光景、あれは配給会社の社員さんなのでしょうか。

博物館に勤めているものですから、メキシコの骸骨人形はよく見ます。
だけど「死者の日」がどんな祭礼行事なのかはあまり知らないままでした。
こんななんだなぁと思うと楽しくて。

少年ミゲル・リヴェラの家では、楽器を演奏することはおろか音楽を聴くことも絶対禁止。
というのも、ミゲルの高祖父(=曾祖父の父親)に当たる男が妻子を捨てて音楽家になったから。
残された高祖母は苦境にもめげず、靴をつくる技術を身につけて靴屋を開いた。
だからリヴェラ家では憎き男が走った音楽を絶対に許さず、代々靴屋を継いできたのだ。

しかしミゲルは音楽が大好き。
音楽家になる夢をあきらめられず、屋根裏部屋でこっそりギターを弾いている。
この町の出身で早逝した偉大な音楽家エルネスト・デラクルスに憧れながら。

伝統的な祭礼行事「死者の日」で盛り上がる町。
広場で開かれる音楽のコンテストにミゲルは出場しようとするが、
家族全員から反対され、怒った祖母にギターを叩き壊されてしまう。
出場者の誰かからギターを借りようとするが無理。
そこでエルネストの遺品であるギターを拝借しようとしたところ、死者の世界に迷い込む。

死者の世界には高祖母をはじめとする骸骨姿の先祖たちがいた。
先祖の誰かから許しを得ることができれば、ミゲルは元の世界へ戻ることができる。
ところが高祖母たちは、許す条件として音楽の禁止を言い渡す。
そんな条件は飲みたくなくて、ほかの手段を考えるミゲルは、
陽気で孤独な骸骨ヘクターと知り合って……。

原題の“Coco”は、認知症の始まっている曾祖母の名前。
ミゲルが話しかけてもほとんど反応しない彼女の名前がどうしてタイトルなのかと思ったら、
なるほど、そういうことですか。

あまりに派手な宣伝は『空海』と通じるところもあり、
たいしたことないんじゃないの?と思っていたら、これは見かけ倒しじゃなかった(笑)。
メキシコの人形とか毛糸絵は毒々しい色のものが多いと
博物館の標本資料を見て思っていましたが、本作ではその色合いが見事なまでに美しい。

歌い手を変えて何度か登場する主題歌『リメンバー・ミー』。
それぞれに違う想いが込められていて、涙なしでは聴けないバージョンも。

メキシコとの間に壁を築こうとしているトランプ大統領
それでいいの?

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『ヒューマン・ハンター』

2018年03月22日 | 映画(は行)
『ヒューマン・ハンター』(原題:The Humanity Bureau)
監督:ロブ・キング
出演:ニコラス・ケイジ,サラ・リンド,ヒュー・ディロン,ジェイコブ・デイヴィーズ,
   ヴィセラス・シャノン,カート・マックス・ルンテ,ローン・カーディナル他

前述の『恋するシェフの最強レシピ』とシネマート心斎橋にてハシゴ。
金城武を見た後にニコラス・ケイジというのもどうなのか。
できれば逆のパターンがよかったのですけれど(笑)。

なぜにシネマート心斎橋はニコラス贔屓なのか。
本作の上映前にも『マッド・ダディ』の予告編が流れていて、これがもうぶっ飛び。
親が狂って子どもを殺しにかかるというバイオレンスらしく、
しかもニコラスはそれを助けるとかではなく、狂うほうみたい。
「この十年でいちばん気に入ってる役だぜ」ってホンマでっか。

で、そんなニコラスの駄作ばかり上映するシネマートが憎めない。
某レビューサイトでは本作の評価散々。1点とか2点とか。
世間で評価されている作品も観たいけど、
クソミソに言われている作品も観たいと思って行ってみました。

近未来の2030年。
資源が枯渇して深刻な食糧問題が勃発、人類は文明崩壊の危機に直面。
アメリカは国家維持のために徹底した管理社会を築いている。

人民省の調査官ノア・クロスの任務は、
社会に不要と思われる人民のもとを訪れ、生産性等を審査すること。
たとえば、年金生活を送る老人を審査し、
金がかかるばかりで何も生み出さない人間だと判断すれば、
“ニュー・エデン”と呼ばれる収容地区への移住を促すのだ。
もしも移住を拒めば、その場で殺すことも辞さない。

有能な調査官として業績を上げ、昇進目前だったノアだが、
ある日、ニュー・エデンの実態を知ってしまう。
本当にそんなところへ人民を送り込んでもいいのか。

移住対象となった女性レイチェル・ウェラーとその息子ルーカスに面会したノアは、
咄嗟にふたりを連れて逃げ出すのだが……。

レビューサイトではクソミソに言われていたので、寝る気満々で臨みました。
そうしたら、そんなにつまらなくもない。
確かにニコラスの顔は鬱陶しいですが(笑)、眠くならなかったよ。

どこかで観たような雰囲気だし、無駄に悪趣味なシーンもあって、
めっちゃ良かったとはもちろん言えないけれど、金返せというほどのものでもない。
世の中の映画を観る目は厳しいのだと思い知らされました。
私のハードルが下がっていただけ!?

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『恋するシェフの最強レシピ』

2018年03月21日 | 映画(か行)
『恋するシェフの最強レシピ』(原題:喜欢你)
監督:デレク・ホイ
出演:金城武,チョウ・ドンユイ,リン・チーリン,スン・イージョウ他

またまた午後休を取りました。先週の火曜日のこと。

晩ごはんは西大橋駅近くの中華料理店に行く予定。
午前の仕事終了後にまっすぐミナミへ向かえたらよかったけれど、
火曜日だったために一旦箕面へ食パンを買いに戻らねばなりません。
いつもは夕刻に食パンを受け取るところ、無理を言って12時半の受け取りにしてもらい、
その後いつものごとく新御(しんみ)で大阪市内へ。

晩ごはんのお店から徒歩圏内でもっとも安いタイムズに駐車。
方向音痴のため、お店の場所を確かめてから南下、心斎橋へと向かいます。
上映開始時間まで余裕があったから、
南堀江のカフェでお茶とケーキと、ついでにグラスワイン。
ひとり昼酒サイコーです。呑みながら本を読む。
ちょうどいい時間となって、シネマート心斎橋へ。

香港/中国作品。
昨秋の第30回東京国際映画祭で上映されたさいには、
英語タイトルの“This Is Not What I Expected”を直訳した、
『こんなはずじゃなかった!』というタイトルで上映されました。
これはイケてないやろ。
ありがちだけど、『恋するシェフの最強レシピ』のほうがマシ。
久しぶりに見る金城武はやっぱりカッコよかった。

実業家で冷酷な不動産王、ルー・ジン(金城武)。
世界中にホテルを所有する彼は、次に買収を狙っている上海のホテルを訪れると、
レストランの味を試すため、次々と料理を持ってこさせる。
しかし、驚異の舌を持つ彼を満足させられる料理はひとつもないどころか、
彼はどれも一口食べただけでしかめ面をして吐き出してしまう。

このままルーにチェックアウトされては全員クビになる。
支配人(トニー・ヤン)は最後の望みをかけ、
女性シェフ、ションナン(チョウ・ドンユイ)に料理をつくってくれと頼む。

天才肌のションナンがつくる独創的な料理にルーは驚く。
女性シェフによるものだということは見抜いたものの、
どんな女性かはわからぬまま、連泊してションナンの料理を食べつづける。

一方のションナンも、自分の料理を気に入った富豪の顔は知らぬまま。
そんなふたりがあちこちで鉢合わせし、お互いの印象は最悪で……。

ありがちなロマコメといえばそれまでなのですが、とにかく楽しい。
ションナンがつくる料理、それを堪能するルー、どちらもいい表情。
笑えるシーンもいっぱいあって、幸せな気持ちになれます。

高橋一生が15歳下の森川葵とつきあっていることが発覚して、
おまえもかいなと思いましたが(笑)、
44歳の金城武演じるルーと18歳下のションナンとの恋という設定でも
なぜか「オッサンの妄想」とは思えません。
金城武なら許せてしまうのが不思議。誰もアンタの許可求めてへんてか。(^^;

ちなみにションナン役のチョウ・ドンユイは、『サンザシの樹の下で』(2010)の女優。
中国では「13億人の妹」と呼ばれているそうです。
ころころと動く表情や仕草が本当に可愛い。

長所だけ好きになるとか、短所だけ嫌いになるとか、できるわけがない。
全部ひっくるめて好きだということ。

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