夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『レディ・バード』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の15本目@西宮)

2018年06月15日 | 映画(ら行)
『レディ・バード』(原題:Lady Bird)
監督:グレタ・ガーウィグ
出演:シアーシャ・ローナン,ローリー・メトカーフ,トレイシー・レッツ,
   ルーカス・ヘッジズ,ティモテ・シャラメ,ビーニー・フェルドスタイン他

ダンナはまた別の国へ出張中です。
同様の状況だった前々週の土曜日、なんばで『犬ヶ島』を観るのを避けて西宮へ行ったら、
『ゲティ家の身代金』が満席でスケジュールを組み直すはめになったから、
同じ過ちを繰り返さぬように、あらゆるケースを考えて臨みました。
しかしこうしてちゃんと考えたときには、「そないに考える必要なかったな」。
ケース1として考えていたハシゴ案であっさり座席が取れました。

余談ですが、面白いなと思ったのは、まだなんばで上映中の『ゲティ家の身代金』が
西宮ではすでに上映終了しているということ。どの回も満席の人気ぶりだったのに。なんで?

グレタ・ガーウィグ、多才な人です。
まだ30代前半でありながら、映画監督であり、脚本家でもある。
女優としてもミニシアター系の作品に多く出演。
数年前にはベルリン映画祭の審査員を務めました。
私が彼女を意識して観るようになったのは『フランシス・ハ』(2012)以降。
それまでにも出演作は観ていましたが、あまり印象に残らず。
ところが彼女自身が脚本を書いた『フランシス・ハ』がすごく面白くて、
その後は『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』(2015)、
『20センチュリー・ウーマン』(2016)など、意識して観ています。

これはそんな彼女の単独監督デビュー作。
2017年の全米映画批評家協会賞監督賞・脚本賞を受賞しました。

2002年、カリフォルニア州サクラメント。
カトリック系高校に通うクリスティンは、自らを“レディ・バード”と称し、
家庭でも学校でもそう呼ぶように周囲に強要している。

決して裕福とはいえない家庭の大黒柱は母親マリオン。
無理をして私立の高校に通わせてくれているが、
ニューヨークの大学へ行きたいと言い募るクリスティンに対し、
学費のことを考えて地元の大学へ行くべきだとマリオンは言う。
口を開けば喧嘩ばかりの母と娘の間で困る父親ラリー。

学校でおこなわれるミュージカルに出演することになったクリスティンは、
同じ舞台に立つダニーに一目惚れ。
富裕な地区に住む彼が、クリスティン憧れの家の息子だともわかって驚喜。
順調な交際に発展したように見えたが……。

自分の暮らす土地が嫌、家も嫌、名前も嫌い。
父親は優しいけれど、失業して鬱病に罹り、
顔にピアスだらけの兄貴とその彼女がなぜか同居中で意味不明、
母親はとにかく口うるさくて、娘の私のことが嫌いに違いない。
素敵なボーイフレンドを見つけたと思ったら実はゲイ、
新しい恋の相手は美少年だけど女たらし。
イケてる女子と親友ごっこを始めたら、本当の親友からは絶交される。
やることなすこと上手くいきません。
クリスティンがわがまますぎて共感するのはちと苦しいけれど、
何もかもが嫌になる年頃ってある。あったと思う。

グレタ・ガーウィグの監督作ということで期待していたこともあり、
評判と期待ほど良いとは思えなかったというのが正直な感想ですが、
クリスティンと兄貴の彼女が並んで腰かけて話すシーンや、
ラストでクリスティンが名乗るシーンはすごく好きです。瑞々しい。

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『万引き家族』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の14本目@伊丹)

2018年06月14日 | 映画(ま行)
『万引き家族』
監督:是枝裕和
出演:リリー・フランキー,安藤サクラ,松岡茉優,池松壮亮,
   城桧吏,柄本明,高良健吾,池脇千鶴,樹木希林他

第71回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したために、
6月8日だったはずの公開日が繰り上がり、前週の土日のみ先行上映。
フリーパスにその制約はなかったので、先行上映中に鑑賞。

「衝撃と感動の社会派ドラマ」との触れ込みですが、カンヌのパルムドールだぞ。
同じくパルムドール受賞作の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)を
感動作を期待して観に行ってどんよりした気持ちで帰ってきた人、
あんなにはどんよりしないと思いますが、お気をつけあそばせ。
ラストにみんな幸せになりそうな予感なんてものはないですからね。
個人的には、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』はあれが最良のラストだと思ったけれど、
本作のほうがやるせない気持ちが強い。

高層マンションが建ち並ぶ町の隙間に残る平屋の一軒家。
家の持ち主である初枝(樹木希林)の年金をあてに暮らす5人家族。
大黒柱のはずの治(リリー・フランキー)の稼ぎは日雇いでわずか。
信代(安藤サクラ)はクリーニング店のパートを切られそう。
亜紀(松岡茉優)は女子高生に扮してミラー越しに客と会話する風俗で働き、
祥太(城桧吏)は治から教え込まれた盗みで日用品や食糧を入手。

いつもの万引き帰り、治と祥太は通りかかった団地の廊下で、
暗闇のなか、ひとり寂しげにたたずむ女の子と目が合う。
お腹も空かせている彼女に「コロッケ、食べる?」と声をかけると、
驚くべきことにうなずき、ついてくる。

彼女は5歳、名前はゆり。翌日になっても帰りたいと言わない。
両親を恋しがる様子は皆無で、むしろこの状況のなかに居たがっている。
彼女の腕にやけどの跡を見つけた治たちは、両親からの虐待を疑い、
ゆりをこのまま住まわせることにするのだが……。

ご覧になる方は想定済みでしょうから、
ネタバレにはならないと思いますが、5人はもともと擬似家族です。
『at Home アットホーム』(2014)と同じ設定で、あちらは本多孝好原作の映画化。
こちらは是枝裕和監督のオリジナル脚本の模様。
状況設定が同じ程度では盗作なんてことにはならないのでしょうし、
また、鑑賞後の印象もまったく異なるものですが、ちょっとデジャヴ。

血の繋がりってなんなのか。
親は子を想うもの。だけど、そういうものだと思いたいだけなのか。
子どもを産めば誰でも母親になるか、そうじゃない。
実際、産まれた子どもの育児を放棄する母親がいる。
血の濃さだけで誰といることが幸せなのか決めつけていいのか。
いろんなことを考えさせられます。

成長するにつれ、善悪について悩む祥太。彼の苦渋の決断がつらい。
何もかもお見通しで、ひとこと声をかけただけの「やまとや」のおじさん。
柄本明演じる彼の表情が私の心に残りました。
彼の姿がウィレム・デフォーとかぶり、『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』と併せて観たい作品です。

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『OVER DRIVE』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の13本目@伊丹)

2018年06月13日 | 映画(あ行)
『OVER DRIVE』
監督:羽住英一郎
出演:東出昌大,新田真剣佑,森川葵,北村匠海,町田啓太,要潤,吉田鋼太郎他

ダンナが海外出張から帰国したのが金曜日で、
土日はフリーパスで少なくとも計5本は観る計画を立てていたのに、
なんと空港でぎっくり腰になったというダンナ。
おかげで、土曜日のサッカーを欠席、
ダンナ実家から「名代」として頼まれていた親戚宅への弔問も自力では無理、
さらに予約していた散髪へも自分で車を運転して行くのは無理だという。
仕方がない、弔問にも散髪にも私が運転してお連れしましたがな。
晩ごはんもいつもなら別々に向かって現地集合するのですが、私の運転で。
その代わりといっちゃあなんですが、帰りは運転できるとダンナがいうから、
アルコールなしのディナーも覚悟していた私ですが、きっちり飲酒しました。

翌日の日曜日。せめていつもの日曜日と同じ程度には映画を観たい。
TOHOシネマズ伊丹にて2本ハシゴするにとどめます。
時間の都合で1本目に選択したのはこれ。

世界最高峰のラリー競技“WRC”(=世界ラリー選手権)を目指す、
若き天才ドライバー・檜山直純(新田真剣佑)は、“スピカレーシング”に所属。
WRCの登竜門となる国内トップリーグカテゴリー“SCRS”で
チャンピオンの座を勝ち取ってWRCへの道を拓こうと、躍起になっている。

好き勝手言いたい放題し放題の彼はメディアの注目の的でもあるのだが、
そんな彼の担当エージェントとなったのが遠藤ひかる(森川葵)。
長らく面倒をみてきた高校生ゴルフ選手の担当を外され、
わがままな直純の担当を上司・香川久俊(要潤)から命じられて不満いっぱい。

一方、直純の兄・篤洋(東出昌大)は、スピカレーシングのチーフメカニック兼エンジニア。
直純とは対照的に穏やかで真面目、チームスタッフの人望も厚い。
篤洋の忠告を無視して無謀な走りを続ける直純に、皆お手上げ状態。
それでもなんとか直純を勝たせようと、毎日必死。
しかしふたりは何度も衝突、チーム内に険悪なムードが漂いはじめ……。

千葉真一の息子、新田真剣佑、確かにイケメンです。でもなんか苦手。
お父さんの影響かどうか知りませんが、演技がいちいち大げさ。
そもそもいかにイケメンであろうと、彼はタイプではないから、
無駄脱ぎされても(笑)全然ドキドキわくわくしない。
そのうえ、14歳のときに千葉真一の友人女性とできちゃったという騒動も思い出すから、
ちょっとキモッと思ってしまうのですよねぇ。
いやまぁ、14歳の彼のほうから誘ったわけではないのでしょうが、
その相手のオバサンについても私としてはキモいわけで。
それに対して、今まで声があまり好きではなかった東出くん。
ほぼしゃべらなかった『聖の青春』(2016)とか、わりと無口な本作とかは悪くない。

噂の高橋一生の彼女、森川葵のこともマジマジと見てしまいました。
彼女、すっごい美人とかスタイルがいいとかいうんじゃないところは、
同性として好感が持てるというのか、きっと性格いいんだと思えます(笑)。
いちばんよかったのは、スピカレーシングのオーナー役、吉田鋼太郎でしょ!?

終盤間際まで直純は嫌な奴。
ゲンナリしていたら、最後はまた泣きそうになってるやん、私。
爽やかやし。これはこれで良しとしよう。←なぜか上から目線。(^^;

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『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』、2回目。

2018年06月12日 | 映画(た行)
なんばパークスシネマで『ファントム・スレッド』を観てから地下鉄で梅田へ。
姉さんとの待ち合わせ時間まで1時間ほどあったので、
大阪ステーションシティのサウスゲートビルディング16階で軽く1杯、いや2杯。
系列の別店で以前お世話になっていたサービスの人が
たまたま休みを取って飲みに来られていて、上手い具合にお会いできました。
そして姉さんとの待ち合わせ場所、JR大阪駅中央改札付近へ。

『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』、前週に観たばかりです。
しかもフリーパスで。
まだじゅうぶんにフリーパス有効期限内なわけで、
TOHOシネマズへ行けばタダで観られるところ、
わざわざお金を払って大阪ステーションシティシネマで。

姉さんと観る映画の選択も私に任されていました。
未見の映画を選んでもよかったのですけれど、そもそも未見のものがあまりない(笑)。
それに、言うほどしょっちゅうは映画を観ない人をお誘いしたときに、
もしもその人が楽しめない映画だったら悲しいじゃないですか。
だから、このさい、確実に楽しんでもらえる映画にしようとこれを選択。
一度観た映画を別の劇場のちがう環境で観るのもいいものです。

2回目も同じところで笑って同じところで泣きました。
たぶんあと何度観てもそうだと思います。

映画鑑賞後に姉さんにも話したのですが、山田洋次監督の作品は日本語が綺麗
1回目のレビューに蒼井優演じる嫁が出来すぎで同性の反感を買うかもと書きました。
出来すぎに感じる理由のひとつがこの綺麗な日本語なんですよね。
彼女演じる憲子は、「い抜き」ではしゃべらない
「~してるんですよ」じゃなくて「~しているんですよ」とか。
実生活でこんなにきちんと「い」を入れてしゃべっていたら、硬い感じがしそうです。
だからって彼女が醸し出す雰囲気が硬いわけではないから、なおさら出来すぎ。

こんなことは同性のやっかみとして(笑)、誰が観ても楽しめる作品だと思います。

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『ファントム・スレッド』

2018年06月11日 | 映画(は行)
『ファントム・スレッド』(原題:Phantom Thread)
監督:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:ダニエル・デイ=ルイス,レスリー・マンヴィル,ヴィッキー・クリープス,
   カミーラ・ラザフォード,ジーナ・マッキー,ブライアン・グリーソン他

ダンナ出張中の羽伸ばし期間もあと1日という日になり、
3月の出張中にも一緒に豪遊した姉さんにまたまたおつきあいいただき、
午後に映画を観てから食事する約束をしました。
姉さんと会うまでに2本観るぐらいの時間があったのですが、なにぶんこの週は遊びすぎ。
かなり疲れが溜まっているから、無理はしないことに。
っちゅうても、1本も観ないのは嫌だから、1本厳選して本作を。

梅田となんばで上映中、姉さんとの待ち合わせは梅田だから、
どう考えても梅田で観るほうがよかったんですけれど、上映開始時間が梅田は早くて。
梅田の上映時間に間に合うように家を出るのはキツイうえに、
そうすると2本観る時間ができて、1本だけはもったいないと思ってしまいそう。
家を早く出るのと、若干遠いなんばパークスシネマまで行くのと、
どちらを選択するか迷って、後者にしました。

映画を多少観る人なら皆ご存じのことかと思いますが、
監督にはポール・アンダーソンという人がふたりいて、
一般的に「エエほうのポール・アンダーソンアカンほうのポール・アンダーソン」と呼び分けられています。
これは「エエほう」のポール・トーマス・アンダーソン監督の作品。

ポール・トーマス・アンダーソン監督がブレイクしたのは『ブギーナイツ』(1997)。
そのときはポルノ男優『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007)では石油王、
『ザ・マスター』(2012)では新興宗教の教祖を描きました。
作品ごとに異なる時代を取り上げるのが特徴ながら、
いずれの作品においてもその完璧主義ぶりが話題に。
今回はそんな監督自身の実体験がモチーフになっているそうです。う~ん、変人だぁ。

1950年代、ロンドンの上流階級に多くの顧客を持つ、
オートクチュールのデザイナー、レイノルズ・ウッドコック。
彼が信用しているのは姉のシリルのみ。
店の切り盛りをシリルに任せ、彼自身は服作りに集中。

完璧主義者でかつ独身主義者でもあるが、ハンサムな彼は女性にモテモテ。
彼のデザインにインスピレーションを与える女性を住まわせ、
飽きればシリルが手切れ金代わりのドレスを与えて邸から追い出す。
そんなことの繰り返し。

ある日、田舎の別荘に向かう途中に立ち寄った食堂で、
レイノルズは若いウェイトレスのアルマに目を奪われる。
彼にとって「完璧な体型」のアルマを新しいミューズとし、邸に連れ帰る。

体型に自信がなかったアルマは、レイノルズに見初められたことに興奮。
彼の創作意欲をかき立てる自分を最初は素直に喜ぶが、
単なるミューズとしての自分の存在に次第に疑問を持ちはじめ……。

すべて本作のために作られたという衣装。素晴らしい。
それと音楽。優雅なことこのうえなく、これまた素晴らしいんです。
登場人物たちも一見優雅ではあるのですが、み~んな変。

朝起きたら、鼻毛と耳毛もきちんとカット、みだしなみに寸分の乱れもないレイノルズ。
マザコンかシスコンか、その両方か。
母親の写真を服の芯地に縫い付けて肌身離さず持っていて、それを誇らしげに語る。
別荘に連れていかれていきなり服を脱ぐように命じられたと思ったら、
そこに姉が現れて採寸開始。ちょっと笑ってしまう光景です。

そんな変人と共に暮らすんだから、アルマが気の毒に見えるのが普通だけれど、
このアルマがまた簡単に引くような人間ではない。実にしたたか。
誰にも感情移入がしづらいなか、アルマよりはレイノルズの気持ちのほうがわかったりして。
たぶん、こういう生活を異常だとわかりながら続けているシリルがいちばんまとも。

“Phantom Thread”とは「幽霊の縫い糸」。面白いタイトルです。
“Woodcock”という名前にしても、ヤマシギ(=鳥)の意味はあるものの、
たぶん「木製のアソコ」のほうを想像させるべく付けた名前ですよね。
『Mr.ウッドコック 史上最悪の体育教師』(2007)なんて映画もありましたが、
ブラックユーモアに満ちた作品でしたし、この名前も監督の冗談でしょう。

仕事のことしか頭にない男性にモノのように扱われる女性がどう出るか。
彼を振り向かせるには、彼に病気になってもらうしかない。
彼もそれを受け入れるなんて、到底理解しがたく狂っています。こりゃもうホラー。
めちゃくちゃ面白かった。けど、人にはよう薦めません。(^^;

レイノルズ役のダニエル・デイ=ルイスは本作をもって俳優業を引退するとのこと。
快演を見せつづけてきた彼の、これは最後の作品にふさわしい。

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