『水を抱く女』(原題:Undine)
監督:クリスティアン・ペッツォルト
出演:パウラ・ベーア,フランツ・ロゴフスキ,マリアム・ザリー,ヤコブ・マッチェンツ,
アネ・ラテ=ポレ,ラファエル・シュタホヴィアク他
TOHOシネマズ梅田にて『名探偵コナン 緋色の弾丸』を観たあと、テアトル梅田へ。
ドイツ/フランス作品。
ノーマークだったのですが、あらすじを読んだらなんとなく面白そう。
監督が『東ベルリンから来た女』(2012)のクリスティアン・ペッツォルトということにも惹かれます。
それにしてもこの邦題はなんとかならなかったものか。
『水曜日に抱かれる女』(1993)を連想します。
原題の“Undine”はヒロインの名前ですが、
水の精“ウンディーネ”の物語をモチーフにしているそうな。
ちなみにウンディーネとは水を司る精霊で、美しい女性の姿をしていることが多いそうです。
もともとは魂を持たないウンディーネは、人間の男性と結婚すると魂を得る。
水の近くで夫から罵倒された場合、ウンディーネは水に帰ってしまう。
また、夫が浮気した場合は、ウンディーネによって殺される。
そして、水に帰ったウンディーネは、もとのように魂を失ってしまう、とのこと。
しかしこういったことについて映画の中では何の説明もありません。
これらのことを知ってから観るほうが絶対おもしろいです。
ベルリンに暮らす女性ウンディーネは都市開発の歴史研究家。
フリーランスで観光客などのガイドを務めている。
その日、始業前に恋人ヨハネスから別れを切り出されたウンディーネは、
別れるならば殺すわよとヨハネスに言い放ち、仕事の後に会う約束を一方的に突きつける。
約束の場所へ戻ってみると、ヨハネスはいない。
放心するウンディーネに声をかけてきたのは、
さきほど彼女のガイドを聴講したばかりの男性クリストフ。
ヨハネスへの想いはどこへやら、すぐに新たな恋が始まる。
潜水作業員のクリストフはウンディーネにぞっこん。
ウンディーネもクリストフを深く愛するようになるのだが……。
ウンディーネは絶世の美人というわけでもなし、でもなんだか魅力的。
水の精の空気をまとっているように見えます。
退屈になっても不思議はない物語なのに、風景も実に美しくて、
映像に見入ってしまいます。
クリストフと幸せな日々を送っていたときにヨハネスと偶然再会。
あんなにウンディーネにつれなかったヨハネスなのに、
ほかの男といるのを見ると、途端にウンディーネとよりを戻したくなる。勝手です(笑)。
自分の命と引き換えにクリストフを救う。
魂を失っても、最期にその心をクリストフに伝えようとしたウンディーネ。
幻想的で美しく、切ない物語でした。