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読書 アニータ・シュリーヴ「いつか、どこかで」

2006-04-26 13:38:36 | 読書
 四十代中程の男女が織り成す狂おしい恋物語。始まりは、日曜版の付録の雑誌に載っていた写真からだった。ショーン・リチャ-ズ、詩人で詩集を刊行したらしい。31年前のサマー・キャンプが甦る。少年(チャールズ)と少女(ショーン)の甘いひと時が。

 雑誌の写真がきっかけで文通が始まり、やがて二人は狂おしい性愛の深淵にのめりこんで行く。それぞれに夫や妻、子供たちという家族があるのにもかかわらず。ショーンは夫に感づかれ、あげく夫は妻を責めるのでなく失望でライフル自殺未遂事件を起こす。
 チャールズは妻に告白し、家から追い出されてしまう。夏の間は、海水浴やキャンプに行く車が通り、チャールズの思索のひと時を過ごす橋も、冬のこの時季路面はスケート・リンクのように磨き上げられている。通りかかったチャールズの車はふわりと浮き上がったと思った瞬間、欄干を粉々にしながら、凍てつく海に呑み込まれる。悲劇的な物語で少し気だるさが残る。

 この本の題名の「いつか、どこかで」は、リチャード・ロジャースの作曲になるスタンダード・ナンバーで多くのアーティストに歌われ演奏されている。二人の思い出の曲として登場する。読んでいて45~6歳でこうも純粋に愛にのめりこめるものだろうかと思ったりもする。その純粋性に心を打たれるが。

 著者は、マサチューセッツ州生まれ。タフツ大学卒業、ハイスクールの英語教師を務めていた折に発表した短編でO・ヘンリー賞を受賞。その後アフリカでジャーナリストとして生活。1989年に処女長編“Eden Close”を発表、最新作の“All He Ever Wanted”まで十作の長編を発表している。マサチューセッツ州ロングメドウ在住。
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