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映画 ニコラス・ケイジ「ロード・オブ・ウォー(‘05)」

2006-09-14 14:05:44 | 映画
 ロシア系移民の子としてブルックリンで生まれ育ち、両親のレストランを手伝っていたユーリー・オルロフ(ニコラス・ケイジ)は、ある日ロシア系のギャングがライフルで殺そうとした相手に、拳銃で殺されるシーンを目撃する。

 飲食店事業は食べる必要を満たすため、ならば、別の必要を満たす事業を……ヒントを得て始めた武器売買業。
 試しにイスラエル製ウジー短機関銃を売り込むと、とっさに気の利いた言葉が出て、自分に商才があることが分かる。
               
 彼が目指すのは”今、世界には5億5千万丁の銃がある。ざっと12人に1丁の計算だ。残る課題は1人1丁の世界”
 というわけで、戦争や民族紛争があるところへ、たとえ熱砂の中でもダークスーツにネクタイ姿で現れる。どこかの国のクールビズなんて、お呼びじゃない。
 男の戦う姿がこれだと言わんばかりに。弟ヴィタリー(ジャレッド・レトー)を引き込み、世界を股にかけたビジネスは大成功を収める。
                
 それに十代からの憧れだったエヴァ・フォンテ―ン(ブリジット・モイナハン)を、嘘で塗り固めた言葉で手に入れニューヨークの高級アパートメントでの生活。
                
 ひたすらユーリーを追う捜査官ジャック・バレンタイン(イーサン・ホーク)の影が忍び寄る。そして逮捕はされるがユーリー・オルロフは、ジャックを相手に自信に満ちた口元に笑みをたたえながら言う。

 “予告してやろう。心の準備が出来るように。ドアがノックされ外に呼び出される。廊下には上官がいてまず君の手柄を褒める。平和への貢献だと、そして表彰と昇進を告げる。
 次に私の釈放を命じる。君は抵抗する。退職も辞さないと。だが結局私は釈放。武器密輸容疑そのものが釈放理由だ。私は残虐な指導者たちと仕事で付き合ってきたが、その何人かは、君たちの敵の敵だ。
 最大の武器商人は君のボス、合衆国大統領だ。輸出量は1日で私の1年分、証拠が残るとまずい取引もある。そんなときは私のようなフリーランサーに委託する。
 だから、私を悪と呼ぶのはいい。だが君にとって必要悪なんだ”

ジャックは叫ぶ“地獄に堕ちろ”

 そして、エンディングでユーリー・オルロフのナレーションは続く。“「彼ら」に私が必要だから釈放したに過ぎない。ともあれ私は天職に戻った。世界を受け継ぐのは武器商人だ。
 ほかは殺し合いで忙しい。生き残る秘訣は「戦争に行かないこと」特に自分からは”

 次のようなテロップで締めくくられる。“本作は実際の出来事に基づく。個人経営も繁盛しているが、最大の武器供給者は米、英、露、仏、中である。この5カ国は国連安保理の常任理事国でもある”
 これらの武器によってもっとも被害を被っているのは、武器もない金もない一般の国民である。

 釈放されたものの、ユーリー・オルロフは両親から勘当され、妻にも見捨てられ唯一残されたのは武器密輸ビジネスだった。しかし、このビジネスの盛衰の鍵は対立や紛争がなくなるかどうかである。
 残念ながら、今のところ地球上には、そこら中に商機は転がっている。

 監督アンドリュー・ニコル1964年ニュージランド生れ。ロンドンでTVコマーシャルの仕事を皮切りに、‘98「トゥルーマン・ショー」でアカデミー脚本賞にノミネートされる。
 キャスト ニコラス・ケイジ1964年1月ロングビーチ生れ。コッポラ一家の血筋。
 ジャレッド・レトー1971年12月ルイジアナ州生れ。
 ブリジット・モイナハン1972年9月ニューヨーク州ビンガムトン生れ。モデル出身、一年に1本の割合で出演。
                
 イーサン・ホーク1970年11月テキサス州オースティン生れ。’01「トレーニング・デイ」でアカデミー助演男優賞にノミネート。‘04「ビフォア・サンセット」でアカデミー脚本賞にもノミネートされる。