
サンフランシスコ市警殺人課女性刑事ケイト・ギレスビー36歳、離婚歴があり愛車はホンダのセダン。容姿や肉体的特徴は不明だが、周囲の視線から窺えるのはかなり魅力的な女性のようだ。
主体性も判断力もあって簡単に手なずけることは困難。アメリカでも男社会といわれる警察では、まだまだ女性の地位が確立していない。そんな中で実力を示すには並大抵の努力では難しい。
それを体現するケイト・ギレスビーは、ある倉庫で冷凍庫に詰め込まれた死体の捜査を進めるうち、一緒に組んでいるサム・スコラーリの妻で検死官のパトリシアがレンジローバーの中で喉を切られて殺されているのが発見される。直後からスコラーリが姿をくらましたため、容疑者として追われる。
一方、表向きは実業家を装う麻薬組織のボス、パオリーニの裁判で証言することに脅迫を受けるギレスビー。そんな不安な状況の中、スコラーリの無実を信じ真相に迫る。検事局の元夫ライドの執拗なデートの誘いを振り払いながら、捜査も一緒にしなければならないというのでストレスがたまる一方だ。
それでも健康な女として、内務監査課の警部補、長身で黒い髪危険なほどハンサムな男にキスをされて下腹部にぽっと欲情の火がともったりもする。警察の捜査なんて誰が書いてもほとんど同じで目新しいものはない。プロットと人物造形の勝負だろう。
多くの登場人物と多くのシチュエーションをうまくまとめてはあるが、この手の話しに食傷気味なのは確かで私にとっては印象に残るほどでもない。
しかし、評価は高く本書がバリー賞を受賞したほかアンソニー賞にもノミネートされたという。
著者はパトロール警官から人質交渉チーム、似顔絵作成までカリフォルニアの法執行機関で20年以上のキャリアを積んでいる。現在は執筆活動に専念している。