1950年(昭和25年)代の時代背景で描く夫婦の危機。アメリカでは、テレビが普及しはじめ初期のロックン・ロールが流行り郊外に住宅が建ち始めた。
フランク(レオナルド・ディカプリオ)エイプリル(ケイト・ウィンスレット)夫妻もご多分に漏れず7年目の危機に直面していた。7年前には不動産屋のヘレン(キャシー・ベイツ)の案内で、高級と言われるレボリューショナリー・ロードの住宅に引っ越して特別な夫婦とまで囁かれた。それが今や道路脇に車を止めて大声で夫婦喧嘩を始める始末。フランクは仕事に熱意が沸かず毎日の通勤をこなしていて、社内のタイピストの女の子にマティーニを飲ませ誘惑するという状態。
一方エイプリルは、念願の女優の夢は能力不足で儚く消えていた。昼間は主婦として家事をこなしているが、何故か倦怠感が抜けない。この時代の女性は、結婚すれば家庭に入るというのが当然という時代。
ある日、結婚前フランクのアパートで見せられた軍隊時代のエッフェル塔を背景にした古い写真に「人が本当に生きている。ものを感じたい。この体ですべてを感じたい。それが僕の野望だ」とフランクは言ったのを思い出した。エイプリルはパリ移住を持ちかける。エイプリルが現地で秘書として働き、フランクや子供たちを食べさせるという。エイプリルの熱意に負けたフランク。
ところが二人のこうした未来への希望が見えてきてかつての情熱が蘇る。その結果として、エイプリルが妊娠する。フランクにも地位が上がる話が出てきてパリ行きに消極的な素振りが見え始めた。ここからまた以前の口げんかの夫婦に逆戻り。しかもそれがエスカレートしていって悲しい結末を迎える。
どこにでもある夫婦関係や近隣の人たちとの関係。理想と現実の狭間でもがく人間模様。愛しているけど満たされない。愛しているのか憎んでいるのかも分からない。その人を失った時、初めて分かる喪失感と言ったものを描いた佳作だと思う。
中でも大喧嘩でお腹の子供について「堕ろして欲しかった!」言ってはならないフランクの言葉が運命を決定づける。そして、その翌朝の場面が秀逸だった。エイプリルは貞淑で従順な妻を演じる。朝食のスクランブル・エッグの卵をかき混ぜるシーン。そしてぎこちない会話。エイプリルが何かを決心している表情。出かけるフランクに手を振る笑みのないエイプリルの顔。とんでもないことが起こりそうな予感。家出か? 自殺か?
主役のディカプリオ、ウィンスレットの微妙な表現力に負うところも大きい。ストーリーを追うのもいいが、それ以外にも見せられるものが映画にはある。例えばこの映画でも1950年代の男は、スーツに中折帽が普通だった。通勤電車内やオフィスに向かう歩道に中折帽の男たちの群れや、やたらに男も女もタバコを吸う場面に違和感を覚えたりする。
監督サム・メンデス1965年イギリス生まれ。‘99「アメリカン・ビューティー」でアカデミー監督賞にノミネートされている。
レオナルド・ディカプリオ1974年ハイウッド生まれ。「タイタニック」でブレイク。 ケイト・ウィスレット1975年イギリス生まれ。「タイタニック」でレオナルド・ディカプリオと共演。
キャシー・ベイツ1948年テネシー州メンフィス生まれ。