Wind Socks

気軽に発信します。

読書 「みずうみ」川端康成

2010-10-16 11:31:59 | 読書

               
 「しかし、正気の時の銀平はどうもその子が生きているように思う」と言うように、銀平は幻を見たり聞いたりする。銀平の内面が抉り出される。読む方はまるで夢を見ているように現実感が乏しい。

 この桃井銀平は、ストーカー趣味があるようで、高校の国語教師をしてるときに、女生徒の家までつけて行ったのが始まり。その女生徒とは、肉体関係になりその女生徒の友人の密告によって学校を追われる。また、成人女性を追って行ってハンドバッグで殴られる。その女性は三十代始めの水木宮子で、七十歳近い神経痛もちの老人に囲われている。老人は宮子に腕枕をしてもらって眠り、乳房に触れて母への愛惜を感じる。この辺の描写は、後年の「眠れる美女」の下地になったのかと思わされる。

 そして今うっとりするほどの17か8の少女を追っていた。銀平にとって女性は憧れの極致にあるようだ。しかし、銀平はこの少女に手を出していないが、行きずりの醜い女と酒を酌み交わしてむしろ鮮やかに少女への憧れが増してくる。

 読む私にとっては、現実にどうしても目を向けたくなる。高校教師という立場を利用して、少女をたぶらかす。銀平に限らず、高校教師の教育者としてのプライドが一切見えない行いには腹が立つ。現にそのようなことが往々にして行われているはずだ。まあ、それはともかく読後感は、多岐にわたることはたしかだろう。瀬戸内寂聴は、「わが性と生」の中で、この本はエロティックだと言っていた。