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二世代にわたる運命の糸くずが織りなす哀歓「プレイス・ビヨンド・ザ・パイン’12」

2014-01-13 16:01:29 | 映画

                 
 人生はその人の出自によって決まるんじゃないかと思わせる。決してアメリカン・ドリームが誰にでもあるわけでもない。

 主役級の二人、ライアン・ゴズリングとブラッドリー・クーパーが共演することなく物語が進む。二人の接点は、ルーク(ライアン・ゴズリング)が銀行強盗を働き逃走。それを追うパトカーの警官エイヴリー(ブラッドリー・クーパー)が追跡。ルークはある住宅に立てこもるが、追ってきたエイヴリーに撃たれ窓から転落して即死するという場面だけ。

 前半はルークの背景が語られていて、後半はエイヴリーを語る。そのつなぎの場面が射殺シーンで、うまいつなぎ方だと思った。自然な流れの中にあるという点で評価できる。

 ルークは、全米各地をめぐる巡業団の一員で、鉄製の球形檻の中をバイク3台が二十日鼠のように走り回るアトラクションのスーパー・スターだった。
 ある夜、過去に一夜を共にしたロミーナ(エヴァ・メンデス)と再会。昼間の空き時間にロミーナの家を訪れて知ったのは、おばあちゃんが抱いている赤ん坊がルークの子供ということだった。人間誰しも自分の子供となれば育てたいと思うもの。ルークも自分のような人間にしたくないという思いもあった。それが出会ったロビン(ベン・メンデルソーン)にそそのかされ、銀行強盗の道に入った。

 ロースクール出身のエイヴリーは、脚に重傷を負いながら、犯人射殺で一躍ヒーローとなる。脚に問題を抱えるエイヴリーは内勤に回される。ここで悪徳警官の存在に気づく。

 悪賢く立ち回って検事補の職を得る。そして、デルカ(レイ・リオッタ)の風俗犯罪課の罪を暴く。テレビのナレーションは、「薬物や金銭に加え銃も盗んでいました」

 それから15年後、ルークの息子ジェイソン(ディン・デハーン)とエイヴリーの息子AJ(エモリー・コーエン)が高校で出会うことになる。現代の思春期の娘や息子たちは、並外れて奔放でAJの父親の家での乱交パーティの夜、ジェイソンはAJの父親が自分の父親を殺した警官だったことを知る。

 悪い父親とかよい父親とかは関係がない。父親を殺された息子は、復讐心に満たされる。血のつながりとはそういうものだろう。森の中でエイヴリーをひざまずかせるジェイソン。エイヴリーは涙ながらに「悪かった」と謝る。エイヴリーも心に傷を負っていたことを知ったジェイソンは、エイヴリーの財布の中身をポケットに入れた。その中にまだ幼児の自分と若い父親、若い母親が写った古ぼけた写真があった。エイヴリーの気持ちがさらに確信された。

 その写真を母親に送った。ジェイソンは、バスでバイクを譲るという男を訪ねた。「500ドル」だという男の「運転できるのか?」という言葉に無言で答え、ホンダのバイクはジェイソンによって田舎道を砂煙を残しながら彼方に消えた。ジェイソンも父親と同じ道を歩むのだろうか? 

 一方、エイヴリーは、司法長官選挙に勝利して息子のAJともども演壇で支持者の声援に応えていた。AJも父親のあとを継ぐのだろうか? 

 それぞれの出自がこうも違いを見せる現実。しかし、羨んでも仕方がない。一歩一歩堅実に歩んでいかなければならない。妙に心に残る映画だった。劇場公開2013年5月
            
            
            
監督
デレク・シアンフランス出自不明

キャスト
ライアン・ゴズリング1980年11月カナダ、オンタリオ州ロンドン生まれ。
ブラッドリー・クーパー1975年1月ペンシルベニア州フィラディルフィア生まれ。
エヴァ・メンデス1974年3月テキサス州ヒューストン生まれ。
ディン・デハーン1987年2月ペンシルベニア州生まれ。
エモリー・コーエン1990年3月ニューヨーク生まれ。
ベン・メンデルソーン1968年4月オーストラリア、メルボルン生まれ。
レイ・リオッタ1955年12月ニュージャージー州ニューアーク生まれ。