私にとってこの映画は、拾い物の一品だった。ギトギト、ドロドロとした粘りつくようなラヴ・ストーリーでないのが現実的で受け入れやすかった。
ニューヨークのウォール街を主な仕事場としているスリのボビー(ピーター・ファシネリ)が地下鉄で掏り取ったのが警察バッジだった。
そのバッジをタクシーで公務だからと言って無賃乗車、クレジットカードも掏り取っていてレストランで使う。足跡を残すというへまをやる。
故買屋のジャックス(ヴィンセント・ギャロ)は、非情で食えない男。ボビーの持ち込んだ携帯電話は、ガラクタだと言って現金かダイアモンドを持ってこいとにべもない。
「一生俺の下で働け」とまで言われる。この背景には、ボビーの父親が亡くなりその借金50万ドルを返済するためにスリ稼業を続けているというわけ。これは母親(マリアンヌ・レオネ)にも内緒のことだった。表向きはウォール街の証券会社で株取引の仕事だと言ってある。
ある日、街でルーシー(ジェイミー・アレクサンダー)と偶然出くわす。「連絡を取ろうとしたけど電話が繋がらなかった。妊娠3ヶ月目」というショックな言葉をルーシーがいう。
警察から追われ、故買屋との縁も切れず、しかも妊娠した女性の問題を抱え込んだボビー。こういう地獄からどう抜け出すか。それを見事に完遂させるという出来映えだった。甘い甘いラヴストーリーではないけれど、最後はほっとさせられる。
ボビーを演じたピーター・ファシネリが脚本も書いていて、これからの作品作りに期待が持てる気がする。ルーシーを演じたジェイミー・アレクサンダーもなかなか魅力的だった。故買屋のヴィンセント・ギャロも、いかつい風貌で面白いキャラクターと見た。
監督
マイケル・コレント1959年4月ロードアイランド生まれ。
キャスト
ピーター・ファシネリ1973年11月ニューヨーク市クイーンズ生まれ。
ジェイミー・アレクサンダー1984年3月サウスカロライナ生まれ。
ヴィンセント・ギャロ1961年4月ニューヨーク州バッファロー生まれ。
マリアンヌ・レオネ1952年1月ボストン生まれ。