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確かな鑑識眼を持ち自宅の巨大な秘密の部屋には女性の肖像画の膨大なコレクションがある。オークションを仕切りビリー(ドナルド・サザーランド)とタッグを組み、かなりの金も儲けている初老のヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ラッシュ)。
いまだに独身で変わり者だった。白髪を隠すために念入りに毛染め、手袋専用のクローゼットには何百と言う数が整然と並べられている。その中の黒い手袋をはめてレストランへ。
黒い手袋をしたまま、自身の頭文字VOのイニシャルを刻印したグラスでワインを飲み料理を食べる。ウェイターのうやうやしい態度は、長年の上客を思わせる。
デザートのケーキに一本のローソクがゆれている。一口も食べていないケーキのローソクが消えかけたとき、ウェイターが「お気に召しませんか?」
「誕生日は明日なんだ」聞かれるまで何も言わない。
クレア・イベットソン(シルヴィア・フークス)という女性から電話がかかる。
「両親が残したヴィラの家具のことで……」彼女の屋敷へ行っても直接顔を合わさない。
しかし、ある日帰ったと見せかけて物陰に隠れた。クレアは戸締りのために部屋から出てきた。若く美しいクレアだった。女を一度も抱いたことがない初老のヴァージルは、生涯で肖像画以外の女性に初めてときめいた。これがヴァージル・オールドマンの悲劇の始まり。
これ以上書くと興味がそがれるのでやめることにする。とにかくただ一点、男というものは若い女性になんと騙されやすい生き物かということだ。私には膨大なコレクションもないから心配はない。
ただ、ヴァージルが騙されたとも思えるし、あるいは人生で一番幸せな時だったとも思える。よく出来たミステリーだ。
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監督
ジョゼッペ・トルナトーレ1956年5月イタリア生まれ。
キャスト
ジェフリー・ラッシュ1951年7月オーストラリア、クイーズランド生まれ。
シルヴィア・フークス1983年6月オランダ生まれ。
ジム・スタージェス1981年5月イギリス、ロンドン生まれ。
ドナルド・サザーランド1935年7月カナダ、ニューブランズウィック州セントジョン生まれ。