公私とも落ち目の音楽プロデューサー、ダン(マーク・ラファロ)はある夜、とあるライヴ・バーで酔った耳にギターを片手の女性シンガーソングライター、グレタ(キーラ・ナイトレイ)の歌声に酔いも醒める思いにかられる。音楽プロデューサーの本能が動き出し、無人のドラムやピアノ、ベースが頭の中でリズムを刻む。
そしてグレタに声をかける。グレタから、ホームレスみたいねとの揶揄も馬耳東風。ニューヨークの路地やビルの屋上で、めぼしいミュージシャンを集めてレコーディングと相成る。
二人にはそれぞれ事情があり、グレタは恋人のディヴ(アダム・レヴィーン)が他の女とLAに行ってしまったし、ダンは離婚していて妻ミリアム(キャサリン・キーナー)と娘バイオレット(ヘイリー・スタンフェルド)とは別居中。かつての栄光を誇った所属会社をクビになり失業中というありさま。
グレタによって錆付いたダンのプロデューサーの感覚も取り戻し意欲的にレコーディングを進める。この場面結構いいんだよなあ。挿入歌もいい。楽しくなる。それに娘バイオレットのギターの腕も瞠目すべきものだった。
出来上がったのを元の会社に売り込む。会社は乗り気でダンも復帰した。グレタは考える。どうやらダンも元の鞘に納まるらしい。尋ねてきたグレタが言う。「契約はしない」ダンは「いいよ」という。
グレタの提案は、インターネットのfacebookで売り込むことだった。これなら売価10ドルの取り分が1ドルというさもしいことに甘んじなくてもいい。アルバムを1ドルで売る。世界中のフォロワーが相手。すでに1万になった。そしてダンは再びクビになった。
音楽のプレイリストでその人の性格が分かるとダンが言う。じゃお互いに披露しようということで、イヤホーンをつけて選曲していく。ダンはフランク・シナトラの「Luck be a Lady」を選びニューヨークの街にぴったりの雰囲気で気分が乗る。そしてグレタのプレイリストの最後は、ドーリー・ウィルソンの「As Time Goes By」。「名曲ね」とグレタ。そう、ニューヨークにはシナトラだよなあ! つくづく思う。
そしてダンは、「音楽は魔法だ。平凡な風景が意味のあるものに変わる。陳腐でつまらない景色が、美しく光り輝く真珠になる」と言う。そう、なんでもない見慣れた我が家もビル・エヴァンスのピアノ・ジャズを流すと俄然輝くような気がする。
なお、劇中歌の「Lost Stars」は2014年第87回アカデミー賞の歌曲賞にノミネートされた。その曲をキーラ・ナイトレイでどうぞ!あまりうまいとは思わないけど……
監督
ジョン・カーニー1972年アイルランド、ダブリン生まれ。
キャスト
キーラ・ナイトレイ1985年3月イギリス、ミドルセックス生まれ。
マーク・ラファロ1967年11月ウィスコンシン州ケノーシャ生まれ。
アダム・レヴィーン1979年3月ロサンジェルス生まれ。バンド「マルーン5」のメンバー。
ヘイリー・スタンフェルド1996年12月ロサンジェルス生まれ。
キャサリン・キーナー1959年3月マイアミ生まれ。