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画面に映るのは男とBMWと高速道路の風景のみ「オン・ザ・ハイウェイその夜86分 ’13」

2015-10-09 16:11:48 | 映画

              
 イギリス、バーミンガムにある巨大工事現場。現場監督のアイヴァン・ロック(トム・ハーディ)は、仕事を終えて愛車BMWのSUV(スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル)に乗り込み、左折のウィンカーを出して信号待ちをしていた。ロックは何かを考えている表情をたたえている。信号が青になっても動かない。後ろに止まったトラックのクラクションが轟く。ロックは意を決したかのようにウィンカーを右折にして発進する。信号を左折すると自宅方面。右折はロンドン方面だった。

 夜の高速道路を2時間近くをかけてロンドンへ。運転席に座るロックと高速道路の車の流れの画面が続く。そして徐々に事情が明らかになっていく。

 こういう手法は、成否は半々だろう。下手な制作者によると目も当てられない退屈なものになるだろう。この映画は退屈を感じなかったから、それなりに格好はついている。

 今夜は自宅でサッカーの試合を見る家族との約束があった。特に息子が楽しみにしている。さらに翌日には大規模なコンクリート打ち込みの作業もある。どんな理由であれ現場監督の不在は建設工事ではあってはならないことだった。ロックはすべて手筈は整えたと言うが、シカゴの本社は納得しない。やがてクビを宣告される。家族との約束を破り、唯一の収入源をすら失うほどの事情とは……。

 7ヶ月前ロンドン出張時、同行のベッサン(声の出演オリヴィア・コールマン)とワインを飲んだ末、お互いの寂しさを紛らわせるためベッドをともした。その結果、早産を知らされ逡巡したがロンドンへ駆けつけるのが今のロック。

 家庭もあるのになぜ行くのか。そこにはロックの子供の頃の孤独な時期が反映されている。父はロックを見放した。一時の浮気にしても孤独な女をロックは見捨てられなかった。父のやったようなことは絶対にしない。孤独な女と孤独な子供にはしたくない。

 だが矛盾はしている。ロンドンへ走るということは、今まで築き上げた家庭を孤独にするということにほかならない。それは男の身勝手で一途な思い。

 脚本は巧妙なタッチで描いていく。ロンドンへの所要時間と同じ時間を費やして描かれる異色の、しかもレベルの高い映画だ。監督のスティーヴン・ナイトは、第16回英国インデペンデント映画賞の脚本賞を受賞。トム・ハーディは、第40回ロサンゼルス映画批評家協会賞主演男優賞を受賞。劇場公開2015年6月
        
        
        
        

監督
スティーヴン・ナイト1959年イギリス生まれ。

キャスト
トム・ハーディ1977年9月イギリス生まれ。
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