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ある日の午後、なぜかふっとヘンリー・フォンダがアカデミー賞主演男優賞を受賞した「黄昏」を思い出した。その連想で殺人者ヘンリー・フォンダが浮かんだ。そしてネットで調べてみるとこの「ウェスタンOnce upon a time in the West」だと判った。しかし、この映画を劇場で観たのがいつだったか思い出せない。
ただ、強烈に印象に残っているのは、ヘンリー・フォンダが演じるアウトロー、フランクの悪漢面と子供を射殺するときの表情だ。
「むかし昔西部で」と題されたこの映画、あらためて観てみるとこんなに面白かったんだと思わずにいられない。オープニングからぐいぐいと引き込まれる。アリゾナ州のどこかの駅。三人の男、扮するのはウディ・ストロード、ならず者顔でよく見かけるジャック・イーラム、アル・ムロック。
丈の長いダスターコートを着て老人の駅員を睨んで2時間遅れの列車を待つ。BGMはないが、カタカタとなる風車の音、ハエが飛ぶ音、風の音、これらはBGMと同等の扱い。
やがて列車が到着した。荷物だけ降ろして列車は動き始める。三人の男は待ち人来たらずときびすを返したとき、ハーモニカの音が聞こえる。客車がカーテンを引くように走り去ったあとには、一人の男が立っていた。ハーモニカ(チャールズ・ブロンソン)だった。
三人の男の中から「馬を用意していないぜ」ハーモニカが「2頭余るぜ」と言い終わると同時に拳銃が火を噴く。すごい音で音響効果満点。
荒野に建つ頑丈な一軒家。妻を亡くしたマクベイン一家が住む。前庭には赤白の格子模様がついたテーブルクロスがかけてあり、誰かを招待する雰囲気。娘が食卓の準備。長男を呼んで駅に迎えに行けという。
枯れた草むらから鳥が飛び立つ。不穏な空気が支配する。そのとき銃声が轟く。娘がゆっくりと倒れるところだった。マクベインが助け起こそうとしたが銃弾が貫いた。長男も馬車の上で射殺される。
ダスターコートを着た五人の男がゆっくりと近づいてくる。その中心にいるのがフランク(ヘンリー・フォンダ)だった。家の中から幼い子供が駆け出してくる。子供が男達を見上げる。子供を見下ろすフランクの表情は、ひげ面にブルーの瞳が冷たい。隣にいた仲間がフランクの名を呼んだ。フランクは名前を知られたと言うわけで、コルト大型拳銃を子供に向ける。
拳銃の轟音に重なるように列車が駅に入ってくる。顔を出したのはジル(クラウディア・カルディナーレ)で、マクベインに嫁ぐ女だった。ここで「ジルのテーマ曲」が流れる。この曲は実にいい。
ハーモニカ、フランク、もう一人シャイアン(ジェイソン・ロバーズ)が加わるが、それぞれテーマ曲があって面白い。また、往年の西部劇映画から象徴的なシーンを意識してあると音声解説にはある。
冒頭の三人の男が現れるシーンは、「真昼の決闘」だし、モニュメントバレーは、ジョン・フォードが「駅馬車」などを撮った場所。クロージングでは、「シェーン」だし、ジルに係わる三人の男ハーモニカ、フランク、シャイアンは、古臭い西部の男で進歩する時代についていけない。フランクはハーモニカに斃されるし、シャイアンも別の銃創で死ぬ。
ハーモニカは、ジルに「somedayいつかな」と言って去っていく。一ヶ所に落ち着けない西部の男。女のジルは、時代に合わせて生きていける。いつの時代も女は強い。この映画はジルが主役だ。
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悪いやつは亡びるという定石通りの映画ではあるが、ときどき思い出したように観てもいい映画には違いない。
ここで何度聴いても気持ちのいいメロディ・ラインを持つ「ジルのテーマ」を、スティール写真を背景のサウンドトラックとスロヴァキアの18歳ソプラノ歌手パトリシア・ジャネコヴァの澄んだ声でどうぞ! この曲を聴くとなぜか泣けてくるんですよね。
監督
セルジオ・レオーネ1929年1月~1989年4月ローマ生まれ。
音楽
エンニオ・モリコーネ1928年11月ローマ生まれ。現役で活躍中
キャスト
ヘンリー・フォンダ1905年5月~1982年8月ネブラスカ州グランド・アイランド生まれ。遺作となった1981年「黄昏」でアカデミー主演男優賞受賞。
クラウディア・カルディナーレ1938年4月チュニジア、チュニス生まれ。
ジェイソン。ロバーズ1922年7月~2000年12月イリノイ州シカゴ生まれ。1977年「ジュリア」でアカデミー助演男優賞受賞。
チャールズ・ブロンソン1921年11月~2003年8月ペンシルヴェニア州生まれ。
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