人生とは一体何なんだろう。人それぞれの捉え方があり、理想と現実の乖離にもがき、意外な展開を見せる人生模様。「ニューヨークはアメリカの都市ではない」という人もいるぐらい多人種の世界都市となったニューヨークで起きる恋の妖しい行方は……。
トーマス・ウェブ(カラム・ターナー)は、ガールフレンドのミミ(カーシー・クレモンズ)から「あれは一夜限りなの。私にはニックがいるから。あの日は寂しかったのでつい」トーマスの信じられないという悲しい顔。20代始めのトーマスは、純粋で一途、セックスは愛の証と思い込んでいる。ミミはトーマスを友人として好意を持っているに過ぎない。
傷心のままアパートに帰り着いて階段に座る男ジェラルド(ジェフ・ブリッジス)から声をかけられる。それがきっかけで2Bに住むジェラルドと友達になる。ジェラルドに励まされたトーマスはミミとレストランで食事。そこで目にしたのは、父イーサン・ウェブ(ピアース・ブロスナン)と若き美女ジョハンナ(ケイト・ベッキンセイル)との濃密な仕草だった。
認知症気味の母ジュディス(シンシア・ニクソン)思いのトーマスの心に怒りの炎が燃え上がる。トーマスはジョハンナをつけ狙いようやく声をかける。ジョハンナはトーマスをちらりと見て「知っているわ、あなたのお父さんの事務所の部屋に家族の写真があるからよ」トーマスはひるまずに「別れろ」と迫る。しかし、その態度と声には迫力がない。トーマスもジョハンナに心を奪われている。
トーマスの年代の男にとって、年上で危険な感じの円熟したジョハンナのような女に、ひたすら恋心を持つのも不思議ではない。一方、ジョハンナにとっても父イーサンより数段若く力がみなぎるトーマスを味わいながらトーマスを一人前の男に育てる楽しみもある。そんな状況は、ミイラ取りがミイラになるように、トーマスもまたジョハンナとベッドを共にすることが続く。
父親と息子が愛人を共有するという骨肉のどろどろとした様相を呈し始める。事態は動く。ジョハンナがイーサンと結婚するという。そんなことは許さない。母が可哀そうだしトーマスの心を裏切るのも許さない。トーマスの一途な気持ちはどこへ行く。
サイモン&ガーファンクル、ボブ・ディラン、デイヴ・ブルーベック、ビル・エヴァンスなどの曲が流れるちょっと切ない、ちょっと温かい物語に青春に戻った気分にさせられた。
ところが批評家の点数は辛い。100点満点中30点強というありさま。批評家の点数なんかはどうでもよい。ケイト・ベッキンセイルもいいし、シンシア・ニクソンの上品なたたずまいも印象的だった。2017年アマゾン・スタジオ制作 劇場公開2018年4月
それでは、題名と同じThe only living boy in New Yorkをサイモン&ガーファンクル、二人とも71歳のライヴでどうぞ!
Paul Simon - The Only Living Boy In New York
監督
マーク・ウェブ1974年8月インディアナ州生まれ。
キャスト
カラム・ターナー1990年2月イギリス、ロンドン生まれ。
ケイト・ベッキンセイル1973年7月イギリス、ロンドン生まれ。
ピアース・ブロスナン1953年5月アイルランド生まれ。
シンシア・ニクソン1966年4月ニューヨーク市生まれ。
カーシー・クレモンズ1993年12月フロリダ州生まれ。
ジェフ・ブリッジス1949年12月カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。