ライトを浴びて淡いグリーンにきらめく瞳。チョットゆがんだ笑み。興味をそそる鼻の上を横断して散らばるそばかすの彼女の名前はジーナ。
どんな危ない局面でも、パンツにお漏らしをするようなことのない胆力のある女なのだ。
そのジーナに参ってしまったんのがシェイクという男。チャールズ・サミュエル・ブション通称シェイクという男は、自動車窃盗の罪でカリフォルニア州ミュール・クリーク刑務所に収監されていて、15年の刑を終えようとしている42歳の白人男である。
刑務所で鍛えられたのか、あるいは元々の性質なのか何事にも動じない。その彼が誓いを立てている。出所したら絶対悪事の道は入らないと。
レストランを開く夢を、個室のベッドであれこれと想像する。レストランはメニューが命だ。フライパンで揚げるフライドチキン、小麦粉はごく薄く振り、スパイスはたっぷりと効かせて。マッシュポテトにまったりと濃厚なグレーヴィー・ソースを添えて。オクラも数本、もちろんシェイクの祖母がよく作ってくれたようなルーを絡めて。
魚のグリル焼き。種類は新鮮で美味しければ何でもいい。かけるのはレモン風味のグルノーブル・ソースあたりか。
ところが裏稼業の身では、おいそれと更生の道を歩かせてはくれない。バスでロサンゼルスに着いた。隣に座った婆さんをタクシーに乗せて見送ったとき、音もなく長い黒色のリムジンが滑り込んだ。
助手席側の後部のスモークガラスがするすると下りるとアレクサンドラ・イランドリャン(レクシー)の笑顔があった。かつては濃密な時間を共に過ごした相手。シェイクが知る中で、最も美しく最も恐ろしい女なのだ。
アルメニアに生まれ16歳でトルコ国境の山岳地帯を根城にする部族軍頭領に嫁入り、20歳の頃にはその頭領を始末してリーダーとなり、近隣の部族軍を配下に収め数年後アメリカに移住した。
今ではロサンジェルス中のアルメニア人ギャング全体を支配している。彼女の肌触りはぬくもりがあるが、心は氷点下の冷たさ、油断のならない女だ。
その女レクシーにハリウッドにあるステーキハウスで頼まれたのが「ラスベガスまで車を運転する。男と会ってその車を渡す」シェイクが後を引き取って「その男からブリーフケースをもらう。飛行機でロサンジェルスに戻って、ブリーフケースを君に渡す。それで2万ドル」義理もあるし、レストラン開店資金も必要だし、やむを得ず引き受ける。
ラスベガスまで転がす車のトランクに、猿ぐつわと手錠という格好で入れられていたのがジーナなのだ。
ギャングの悪の世界で生き延びようとする一人の男を,、コメディタッチで描くクライム・サスペンス。わたしにはあまり余情のないストーリー展開のため、感情移入できなくてやや退屈だった。
この本の前に読んだルー・バーニーの「11月に去りし者」の方が私の好み。
ちなみに、題名の「ガットショット・ストレート」とは、ポーカー用語、ガットショット・ストレート・ドローのこと。別名インサイド・ストレート・ドロー。たとえば手持ちのカードが3・4・6・7・8なら,間の5を引くとストレート完成となる状態のことと解説がある。