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映画「ガラスの城の約束The Glass Castle」劇場公開2019年

2022-03-07 16:20:03 | 映画
 自分の境遇を恥ずかしく思ったことはないだろうか? 父親の職業が、父親の暴力的なところが、母親の優柔不断なところが、貧乏な家庭が……これは実話でニューヨーク・マガジンのコラムニスト、ジャネット・ウォールズの勇気ある自叙伝なのだ。
 2005年に発刊された「ガラスの城」は好評で、400万部を売り上げ31の国で出版された。

 映画の出だしはジャネットが成人して、婚約者の証券アナリストのデヴィッド(マックス・グリーンフィールド)を交えた仲間内の食事会で、ジャネット(ブリー・ラーソン)の家族について問われたとき、少し言いよどみながら「母はアーティストで、父は起業家です。質の悪い漂青炭を効率よく燃やす技術を開発しています」と言う。

 これはデヴィッドと打合せ済みで、回答をでっちあげてあった。ジャネットはそこそこの収入を得られるコラムニストとして、世に出ようとしていた。過ごしてきた家族、特に父について恥ずかしさと憎しみを払しょくできないでいた。

 父レックス・ウォールズ(ウディ・ハレルソン)は、アル中で暴力をふるう男だったが、自由な精神と行動が変わり者に見えた。ボディの塗装が剥げ、穴の開いたワゴン車に妻ローズマリー(ナオミ・ワッツ)と子供4人を乗せて放浪する。荒野で野宿をする。枝ぶりのいい木を見つければ、ローズマリーは絵筆を握る。学校教育を否定する。子供たちは学校には、行っていない。その代わりに本を読ませる。レックスは博識だからいろんなことを教えていく。ジャネットには白紙のノートを渡して、これに綴っていけ。

 レックスのひどい時は、食べ物がないのに自分は酒を飲む。ようやく丘の上にボロ家を見つけ住みつく。庭にガラスの城を作ろうとジャネットと約束する。しかし、父の行状にたまりかねて、ジャネットは家を出る。

 父と疎遠な中、ジャネットはデヴィッドと結婚して素敵な家に住んでいる。二人とも成功した結果だった。今夜も裕福な顧客とのディナーが待っている。これはあくまでもデヴィッドのビジネスのため。

 その席でデヴィッドがジャネットの父に話を振った。いつもの偽りの話へと。ジャネットは「ちょっと失礼します」と言って席を立った。

 化粧室の鏡の前で父を回想した。ウォールズ家の人間は腹の中で炎が燃えているとも言ったし、悪魔を退治する鋭いナイフも見せてくれた。ジャネットは思う「私の中の恥じらう気持ちは悪魔かもしれない。子供は両親を選べない。したがって、両親は子供を健やかに育てなければならない。それが義務だ。父のような育て方がいいとは言えない。でも、父に変わりはない。どんなことがあっても」ジャネットの恥じらう気持ちと憎しみは、鋭い刃によって断ち切られた。

 席に戻ったジャネットは「両親は空きビルの不法居住者です。3年間ホームレスで昔から貧乏でした。父は研究なんかしてないけど、何でも答えてくれた。誰よりも賢い人です。そして酒浸りで、やることが中途半端、性格も破綻している。でも、誰よりも大きな夢を持ち、自分に正直です。私にもそうあれと」
 デヴィッドに向かって「ごめん、行くわね」デヴィッドとの関係も終わり、ジャネットは新しい門出に向かって歩き始めた。残念なのは、父が約束したガラスの城が出来なかったことだ。でも、その城は私が造る。

 ジャネット・ウォールズ本人は、1960年アリゾナ州フェニックスで生まれる。フェニックスからカリフォルニア州サンフランシスコ、ネバダ州バトルマウンテンとホームレスの生活を経てウェストバージニア州ウェルチの小高い丘の上の家に落ち着く。電気も水もない3部屋の家だった。

 17歳でニューヨークに出て妹ロリと一緒に住む。法律事務所で1年間電話番の仕事をして、助成金、ローン、奨学金でバーナード・カレッジ・コロンビア大学に学び1984年卒業する。
 ブルックリンの新聞「フェニックス」の記者、1987年から1993年までニューヨークの雑誌「インテリジェンス」にコラムを執筆、1993年から1998年まで男性誌「エスクァイア」のゴシップコラムを書き、以後有料テレビチャンネルのMSNBCや各テレビ局にも出演している。

監督
デスティン・ダニエル・クレットン1978年ハワイ州マウイで日系アメリカ人の母とアイルランドやスロバキアの血を引く父親との間に生まれる。2013年ブリー・ラーソン主演の「ショート・ターム」が批評家からの熱烈な支持を得て各地で多くの賞を受賞、ブリー・ラーソンも高い評価を得た。

キャスト
ブリー・ラーソン1989年カリフォルニア州サクラメント生まれ。フランス系アメリカ人。

ウディ・ハレルソン1961年テキサス州ミッドランド生まれ。特異な性格俳優であるが、生い立ちも特異、性格も特異でこの映画の役にもピッタリ。父親はマフィア雇われの殺し屋、母は弁護士秘書。父親は1978年連邦判事射殺の罪で終身刑、刑期中に死亡。ウディ本人は数々の問題行動を起こし、たびたび警察に逮捕される。有名なのが大麻合法化活動家としてらしい。

ナオミ・ワッツ1968年イギリス、イングランド、ケント州生まれ。アカデミー賞にノミネートされるが受賞に至っていない。

マックス・グリーンフィールド1979年ニューヨーク州ドブス・フェリー生まれ。

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