岩山の上で右足親指の剥がれそうな爪を強引に引っ張った。シェリル(リース・ウィザースプーン)はその痛みに振り絞る声を出した。不運なことに脱いだ靴がころころと岩場を転げ落ちていった。今度の声は「ファック・ユー ビッチ!」オープニングがこの場面。
ここはPCT(パシフィック・コースト・トレイル)のど真ん中。メキシコ国境からカナダ国境までアメリカ西海岸を南北に縦走する総距離4000キロのトレイルで靴をなくすとは命にかかわる。さて、どうするんだろう?
一転場面はシェリルの出発点モハベのモーテル。出発準備で水の重さに驚く。バックパッカー用のフレームのついた大きなザックにすべてを収納して持ち上げてみた。全然持ち上げられない。両肩を通してサイドボードに掴まりながらやっと立ち上がれた。観ている方は、これで荒野のトレイルを歩けるのだろうかと不安に襲われる。
ただ歩くだけの実話の映画化は難しいのだろう。トレイルを進むに従ってフラッシュバックでシェリルの過去が語られる。夫とは協議離婚したこと。その原因がシェリルにあること。シェリルはだれ彼もなくセックスをするという身持ちの悪さを持っている。そんなシェリルに母の死というショックが重なる。自分を見つめなおす旅が、1600キロを歩くことだった。シェリルはこのトレイルを選んだ。
わたしもかつて登山に熱中したことがあったが、確かに大自然の中に置かれると純粋な心を感じることが出来る。だからといって過去の放埓が一転するのも人それぞれだろう。
シェリルが最初のテントを張る場面では、説明書片手に悪戦苦闘の体たらく。この辺にもシェリルという人間のいい加減さが現れている。新品のものをいきなり持ち出すことはしない。事前の練習をするはずだ。
この映画どうやらアメリカのアウトドア用品メーカーの宣伝臭もする。コンロは、MSR社製。靴はREI社製という具合。
4年と7ヶ月と3日かかった旅が終わった。最後の日、そこに着くまで行き先は分からなかった。そこは「神の橋」。4年後この橋で結婚することに。エンディングのナレーションは、なにかを悟ったようなシェリルだった。
シェリル・ストレイドの原作「WILD」は、ニューヨーク・タイムズでベストセラーを記録。このアメリカ三大長距離自然歩道の一つPCTには、年間300人ほどが挑戦しているらしい。
監督
ジャン=マルク・ヴァレ1963年3月カナダ、モントリオール生まれ。’13「ダラス・バイヤー・クラブ」の監督で、アカデミー作品賞はノミネートだったが、マシュー・マコノヒーが主演男優賞、ジャレッド・レトーが助演男優賞を受賞している。
キャスト
リース・ウィザースプーン1976年3月ルイジアナ州生まれ。’05「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」でアカデミー主演女優賞を受賞。
ローラ・ダーン1967年2月ロサンゼルス生まれ。本作でアカデミー助演女優賞にノミネート。
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