十人十色と言われるように人それぞれで、例えばイギリスの映画雑誌「エンパイア」の歴代ベスト100のうちベスト10を見ると
1ゴッドファーザー
2レイダース/失われた聖櫃
3スターウォーズ/帝国の逆襲
4ショーシャンクの空に
5ジョーズ
6グッドフェローズ
7地獄の黙示録
8雨に唄えば
9パルプフィクション
10ファイト・クラブ となっている。
もう一つ、アメリカ、ロサンゼルスにあるAFI(American Film Institute)のベスト10では
1市民ケーン
2ゴッドファーザー
3カサブランカ
4レイジングブル
5雨に唄えば
6風と共に去りぬ
7アラビアのロレンス
8シンドラーのリスト
9めまい
10オズの魔法使い となっている。
国が違えばかなり色合いが違ってくる。ゴッドファーザーと雨に唄えばが共通している程度だ。
そして私のベスト10は
1第三の男
2ゴッドファーザー
3風と共に去りぬ
4カサブランカ
5ウェスタン
6若草物語
7十二人の怒れる男
8裏窓
9男と女
10理由なき反抗 とずいぶんと違ってくる。
さて私の選んだベスト10について少しコメントしてみよう。
1第三の男(1949年)は、なんといってもラスト・シーンが忘れられない。キャロル・リード監督、名優といわれるオーソン・ウェルズ、ジョセフ・コットン、イタリアの美女アリダ・ヴァリのキャスト。そしてアントン・カラスのツイターの演奏するテーマ曲。モノクロ映像が織りなす光と影がミステリアスで、戦争の負の遺産を背負った人たちの生きざまを哀しくも美しく描く。特にラストシーンでの女を怒らせれば怖いぞと警告にすら見える。
第二次大戦後のオールトリアのウィーン。アメリカ人作家ホリー・マーチンス(ジョセフ・コットン)は、親友ハリー・ライム(オーソン・ウェルズ)から仕事の依頼でやってきた。ハリーのアパートを訪ねると管理人から、前日自動車事故で亡くなったと告げられる。信じられない思いから、真相究明に乗り出す。
その過程でハリーの恋人アンナ・シュミット(アリダ・ヴァリ)と出会う。二人で再び管理人と会って、第三の男の存在を知る。そしてハリーが闇で粗悪なペニシリンを売りさばき、多くの人々が苦しんでいる実態も知る。ハリーがそんな極悪非道な男だったのを知り、帰国を決める。
そしてアンナに挨拶のために行く途中ハリーに遭遇、ハリーは闇に紛れて姿を消す。この事実を警察のキャロウェイに相談する。念のために墓を掘り返すと、別人の遺体が出てきた。同じころアンナがパスポートの国籍偽造で逮捕される。警察はホリーにハリー逮捕の協力を求めて来た。ホリーはアンナ釈放を条件に受け入れる。そして罠をしかけてホリー自らの手でハリーを射殺する。ハリー埋葬の日、アンナはホリーと目を合わすこともなかった。
グレアム・グリーンの原作と脚本になっているが、小説のほうでのラストは、ホリーの腕にアンナが手をかける場面らしい。甘いラヴロマンスとして終わるが、映画ではそうではない。ホリーの裏切りに怒っているのだ。女を怒らせると、ほんとうに怖い。
2ゴッドファーザー(1972年)は、イタリア移民の悲哀を描き出した大叙事詩というけれど、マフィア映画がここまで支持されるとは驚きではある。主題曲ニーノ・ロータ作曲の「愛のテーマLove Theme From The Godfather」の心地よい響き、出演する俳優の豪華さ、ストーリーへの共感と相まって映画の魔力のなせる業か。
この曲は、最初に「Speak Softly Love」としてアンディ・ウィリアムスが歌った。私は今でもしょっちゅう聴いている。
3風と共に去りぬ(1939年)も南北戦争を背景にした大叙事詩といえる。主役を演じるのはスカーレット・オハラ役のヴィヴィアン・リー。この映画も女の強さを描いている。そして相手役レッド・バトラー役としてクラーク・ゲーブル。クラーク・ゲーブルを見たとき、ちょび髭でにやけている感じが好きになれなかった。ところが後年東京地下鉄丸ノ内線でクラーク・ゲーブルのちょび髭のないハンサムなそっくりさんを見かけた。改めてクラーク・ゲーブルがハンサムなのを知ったのだ。以後違和感を持っていない。この映画の主題曲「タラのテーマ」もいい曲だ、すぐに頭の中で鳴り出す。
4カサブランカ(1942年)。個性的なハンフリー・ボガードとスウェーデン出身の美人女優イングリッド・バーグマンの共演。1941年の「ジェキル博士とハイド氏」でイングリッド・バーグマンがすごくキレイだったのを思い出す。この映画も主題曲「As time goes by」の心地よい旋律とともに大義を重んじ愛を捨てる格好いい男ハンフリー・ボガード。ボギーという二ックネームで親しまれる。
5ウェスタン(1968年)西部開拓時代の末期、私利私欲の輩が多い時代に、女が敢然と立ち向かい生きていく。それを助けるまさに大義を重んじる男たちを描く。エンニオ・モリコーネの音楽が冴える。それは抒情的な「Once Upon a Time West」。
さらにギャングの親玉役のヘンリー・フォンダ。牧場主家族皆殺しの場面。子供を射殺するときの表情が、あの知的で穏やかなヘンリー・フォンダが豹変して、鬼の形相といってもいい恐ろしい顔が今でも忘れられない。
6若草物語(1949)マーヴィン・ルロイ監督四姉妹を演じるのはジューン・アリソン、ジャネット・リー、マーガレット・オブライエン、エリザベス・テイラー。作者ルイーザ・メイ・オルコットの半ば自伝的小説であり、児童文学、家庭小説、少女小説、青春小説、教養小説、女性文学でもあるとウィキペディアにある。四姉妹の成長物語でもある。
この映画を観たときエリザベス・テイラーの美しさに心を奪われたのである。「世の中にこんな美女がいる」と。もっと鼻を高くしようと、洗濯ばさみを鼻に挟んでいるシーンの映像は今でも鮮明だ。
7十二人の怒れる男(1957年)父親殺しで起訴された少年の裁判で、証拠や証言が少年に全く不利な状況下だった。陪審員全員一致の有罪を多くの人が確信していた。しかし、陪審員番号8番の男(ヘンリー・フォンダ)による提案が、次々と矛盾を露呈していくという脚本と演出の圧倒的な力で、観る者を感動の虜にする。この映画の再放送を私の中学生の息子と娘と観たとき、二人とも感動していたのを覚えている。
8裏窓(1954年)アルフレッド・ヒッチコックが制作した一級のサスペンス映画。足を骨折したカメラマン(ジェームズ・スチュアート)がアパートで自宅療養中、暇を持て余し裏庭の窓から人々を観察し始める。怪しい男を発見する。恋人のリザ(グレース・ケリー)に手伝ってもらうが、男が感づいて襲ってくるというサスペンスなのだ。美女グレース・ケリーを堪能したものだ。
9男と女(1966年)フランスの恋愛映画。映画のスクリプト係のアンヌ(アヌーク・エーメ)とレーサーのジャン・ルイ(ジャン=ルイ・トランティニャン)の恋物語。フランシス・レイの主題曲とともに忘れえぬ映画となっている。20年後の1986年「男と女Ⅱ」として続編が作られ、2019年「男と女 人生最良の日」として三部作の掉尾を飾った。 ジャン=ルイ・トランティニャンの遺作となったし、 アヌーク・エーメも最後の作品になるのだろう。彼女は90歳で、まだ人生を楽しんでいる筈。
10理由なき反抗(1955年)1955年9月30日24歳の若さで他界したジェームズ・ディーン。1955年の「エデンの東」、1956年「ジャイアンツ」。「エデンの東」でスターの地位を不動のものにしたが、運命はいたずら者でディーンの命を奪った。若者の理由なき反抗は、誰にでもあること。過ぎ去って振り返ってみれば、赤面のことばかり。アメリカの作曲家でジェームズ・ディーンの友人デイヴィッド・ダイアモンドは「私は彼ほど孤独な人間をほかに知らない」と言う。確かにそういう表情とか所作に現れていた気がする。
それでは記憶に鮮やかな「第三の男」のラストシーンを観てください。映画の雰囲気を味わっていただけると思う。はらはらと落ちる落ち葉が、アンナの寒々とした心を表しているかのように。
ホリー「キャロウェイ 彼女の面倒を頼む」
キャロウェイ「彼女が断るさ」
ホリー「降ろしてくれ」
キャロウェイ「時間がない」
ホリー「このままじゃ帰れん」
キャロウェイ「冷静になれ」
ホリー「そんな器用じゃないさ キャロウェイ」
ホリーはジープから降りてアンナを待つ。
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