1999年にウィリアム・クロイトン夫妻と子供二人を殺害した罪で、終身刑を言い渡されたダニエル・レイモンド・ペルは、四十三歳、小柄で筋肉質な体。目は空や海のブルーとも、青の美しさが珍重される宝石とも似ていない珍しいブルーだった。
その目は威圧感のある視線だった。狡猾で飛びぬけて頭のいい男と対峙するのは、カリフォルニア州捜査局捜査官キャサリン・ダンスだ。
ダンスは尋問とキネシクス――ボディランゲージ分析――の専門家である。ペルが脱獄して、それを追うダンス。この巧妙に仕組まれた脱獄がやがて明らかになり、捜査の裏をかいて逃走するペル。ダンスが一時心を寄せたFBI捜査官ウィンストン・ケロッグがペルを追い詰め射殺する。
が、射殺体の姿勢に疑問を持ったダンスが、ケロッグに事情聴取するという展開。理詰めで瑕疵のない筋に思わぬどんでん返しがちりばめられエンタテイメント性溢れる流れに没頭できた。
そして私好みの観光的興味を満足させてくれる記述もある。例えば、モンテレー半島にあるパシフィックグローブについて、「パシフィックグローブは、カリフォルニアに最後の残された禁酒の町としても有名だが、斑蝶が冬を越す土地としても有名だ。秋から冬にかけて、何万匹もの斑蝶がこの一体に集まってくる」
また、ダンスの両親は、カーメル(クリント・イーストウッドが市長を務めたことがある)に住んでいてペットの飼育に関する放し飼い禁止の厳格な条例がある。しかし、ペット・フレンドリーな街でペットを連れて宿泊できるホテルをドリス・デイが経営しているとか。
それに夕食にパンケーキを食べるということにはちょっと驚いた。しかもシロップとバターものせるとくれば、アメリカ人の中年男女のひょうたん型の体型がうなずけるというものだ。しかも、家でデザートと称してポップコーンを食べるとはねえ。意外にお粗末に思うが、こういうのを読むと世界一バラエティに富んだ食事をしているのは日本人だと確信するね。
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